第八話
四月六日──新入部員歓迎週間の初日となる今日、新しく二名の新人を加えた風紀委員会は本部に集合していた。
「今年もまた、あのバカ騒ぎの一週間がやってきた。有力な部員の獲得は各部の勢力図に直接影響をもたらす重要課題であり、その争奪合戦は熾烈を極める。殴り合いや魔法の撃ち合いになる事も残念ながら珍しくない。今年は幸い卒業生分の補充が間に合った。紹介しよう、立て」
その言葉を受け、新しく風紀委員会に加入した二名は立ち上がる。片方には八枚花弁のエンブレム、もう片方の制服にはその紋は刻まれていなかった。
「1ーAの森崎駿と、1ーEの司波達也だ。早速パトロールに加わってもらう」
そこで上級生の一人が少々侮蔑的な雰囲気を纏いながら達也を親指で指しながらボソッと呟く。
「役に立つんですか」
「心配するな、二人とも使えるヤツだ。司波の腕前はこの目で見てるし、森崎のデバイス操作も中々のものだ。他に言いたいことがあるヤツはいないか?」
他の風紀委員会の面子は無言の肯定で答える。
「よろしい、では早速行動に移ってくれ 出動!!」
摩利の号令に皆が胸に手を当て了解の意を示す。そして風紀委員達は適当な会話を挟みながらぞろぞろと本部を後にしていった。
「私は一旦生徒会に顔を出してくる。新入生二人は副風紀委員長の指示に従ってくれ。では頼むぞ」
そう言って摩利も他の面々に続く。
“はい”と短く返事を返した芺は森崎と達也に説明を始めた。
「まずはこれを渡しておこう」
そう言って芺は風紀委員会の腕章とレコーダーを机の上に置いた。
「レコーダーは常に胸ポケットに入れておけ、もし何かあればここのボタンを押して撮影を始めてくれればいい。……のだが、風紀委員の証言はそのまま証拠として扱われるから、そこまで撮影に重きを置く必要は無い。あくまで保険のようなものと考えてくれ」
二人が理解したのを確認して注意事項を続ける。
「それとCADについてだが、風紀委員会はCADの学内携行が許可されている。使用においても毎回誰かに確認を仰ぐ必要も無い。だが、不正使用が判明した場合は委員会除名の上、一般生徒より厳重な罰が課せられる……肝に銘じておくように」
最後のセリフはどこか森崎に向けられたようにも見えた。森崎も後ろめたいことがあるのか目を背ける。
芺が説明を終えると、達也が口を開いた。
「質問があります」
「何だ?」
「CADは委員会の備品を使用してもよろしいでしょうか」
芺はほんの数秒考えた後、先日整理したCADを見て答える。
「構わないが、アレは旧式だぞ」
「確かに旧式ですがエキスパート仕様の高級品ですよ、あれは」
「そういうことなら自由に使ってくれ。CADも使ってくれる方が喜ぶだろう」
「では……この二機をお借りします」
その発言に森崎は動揺を見せる。芺も興味を惹かれたようだ。
「ほう、二機か。お手並み拝見といった所だな」
そういう彼の言葉は皮肉などではなく純粋な期待が感じられた。
「他に何か質問はあるか?……よし、では二人とも巡回を始めてくれ」
───
新入生二人に説明を終えた後、芺は今まさに勧誘が最も盛んであろう各部のテントが並ぶ区間を警備していた。
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