ハーメルン
幸せの始まりはパン屋から
第18話

「ポピパのチョコレート交換会を始めまーす!」

2月14日の花咲川女子学園の中庭でボーカル兼ギターである香澄の宣誓により、私たちのチョコ交換会が昼休みに始まった。

私たちは女子高だから、チョコを持って来ていても同性にしかあげれないから意外とオープンに持って来ている。
……私はバンドメンバーにあげるチョコは小さめのトートバックに入れてきて、みゆき君にあげる分は通学かばんの奥で身を潜めさせている。

「それじゃあみんな持ってきたチョコ、出してみよっか」

私がそう言うと、他のバンドメンバーも各々持参したチョコを取り出し始めた。私は一から手作りのチョココロネをみんなの前に出した。昨日試しに同じものを一個作って食べてみたけど、かなりおいしかった。

他のバンドメンバーたちはお店で買って来たお気に入りのおいしいチョコやコンビニで売っているチョコレートなどが飛び出した。
キーボード担当の有咲はかなり気合の入った手作りチョコを持って来ていてちょっとびっくりした。

私は有咲に形よりも気持ちが大事なんだよね、って言ったけど、何だか自分にも言い聞かせているような気もした。
有咲が手作りチョコを少し出し渋っていたけど、私もみゆき君にチョコをあげる時も出し渋ってしまうだろうなぁ。

「「「「「いただきまーす!」」」」」

あ、甘くておいしい。
みんなが持ってきたチョコレートは例外なく口の中に入れた瞬間、溶けてなくなったような感覚だった。チョココロネは溶けないけどね。

でもね、有咲が持って来てくれたチョコが一番早く溶けてなくなったような気がした。




「流石に、ちょっと寒いなー」

集合時刻の10分前に花咲川西高校の校門前に背中を預けて立っている。もう2週間経てば3月って良く言われるけど、まだ冬だからじっと待っていると足から冷えて来る。

それに時々、校門から出て来る生徒からの視線を感じる。
あまり気にしては無いけど、好奇な視線は好きになれない。そりゃあ、女子高の制服を着た女の子が共学の高校の門前で誰かを待っていたら気になるだろうけど。


約束の時間になったけど、まだみゆき君は来ていない。まだ部活が長引いているのかな。そもそも下校時刻が速くなっている冬にどんな活動をしているんだろう。
携帯をぼーっと見ながら考えていると突然、視界が暗くなった。

「だーれだ」
「えっ!?」

私は正直、驚いたと言うより恐怖の方が勝っていた。「だーれだ」と言う声で誰が私の後ろに立って目隠しをしているのかは分かったけど、先に身体が反応しちゃって……。

とっさに動いた肘がみゆき君の鳩尾(みぞおち)付近に勢いよく突き刺さってしまった。と同時に後方から「ひえぇ!!」って言うかわいらしい悲鳴が聞こえた。


「ごほっごほっ!」
「わわ!ごめんみゆき君!大丈夫?」
「さ、流石に鳩尾に肘はダメだって……」

それは痛いだろうし私も悪いけど、急に後ろから目隠しもダメだよ。

「後ろから目隠しもダメだよ。……不審者かなって思ってちょっと怖かったし」
「それも、そうか」
「もうこの話はおしまい!今日は駅前まで一緒に帰ろ?」

[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/3

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析