13話
魔術師組合の前でサトリとペテル達漆黒の剣の4人は槍を構えた十数人の衛士に取り囲まれていた。ペテルとルクルットが阿吽の呼吸でいち早く前に出て身構え、ダインはニニャを壁際に庇った。
しかし衛士相手に武器を抜くわけには行かず、緊迫した顔で取り囲んだ衛士の壁を鋭い目で見つめた。
「な、なんで衛士が!?」
「ルクルット!ついにやってしまったんですか!?」
「ニニャ!俺だってさすがに落ち込むぞ!?」
「二人とも、今はそれどころではないのである!!」
(事情も知らないのに余裕あるな。冒険者なんてやってるとこういう突発的な事態に慣れてくるのか?)
普段は静かに話すダインの大声は体格が良いだけに迫力があり、取り囲んだ衛士達はびくりと震える。衛士の力は一般人とほとんど変わらないので、銀級冒険者であるダインの大声が獰猛な肉食獣の咆哮のように感じるのかもしれない。
身構えるペテルとルクルットの後ろでサトリはつまらなそうに居並ぶ衛士達を見回している。その冷たい視線に晒された衛士達は寒気を感じるが、中には全く動じない者もいた。
「だから言っただろう。あんな連中に関わるべきじゃないって」
「意外と遅かったわね。ジェンター」
(受付の……やっぱりこいつがそうだったのか!)
唯一サトリの視線を受け流しているジェンターは、はっきりとした上位者として数珠繋ぎになった衛士の後ろにいた。
「お役所ってのはそういうものだよ。これも仕事さ」
「ふふ……どっちの仕事かしら?」
怪しく微笑むサトリを見て金髪の三枚目気取りは僅かに目を細める。この国では一般的な青い瞳に警戒の色が混じった。
「はて何のことやら。ああ抵抗はしない方がいい。君が強いのは知ってるが抵抗すればさらに罪状が増えるだけだぞ?」
サトリを庇って前に出ているルクルットが、槍を突き付けてくる衛士達を気迫だけで威嚇しながら舌打ちした。
「どうなってんだ!?なんで衛士がサトリちゃんを」
「言っただろう。その娘には衛士二名の殺害容疑がかかってるのさ。君らも冒険者なら犯罪者を庇ったらどうなるかわかるだろ?」
ジェンターは大げさに肩を竦めて首の前で縦に手刀を切る仕草をする。その仕草が何を意味するかは冒険者なら誰でも知っていることだ。犯罪に関与した冒険者への罰則は罪状にもよるが、もっとも重いもので冒険者プレートの剥奪と組合からの永久追放。刑期を終えて釈放されても冒険者としては死ぬのと同じだ。しかしルクルットは全く怯まなかった。
「うるせえ!だいたい人殺して逃げてる人間が往来であんな派手な自己紹介するかってんだ!」
「それを判断するのはこっちだ。なに心配はいらない。問題ないと分かればすぐに釈放されるさ。さて。そろそろどいてくれ。邪魔すればお前らも共犯だぞ」
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