迺天①
魔導大隊が帝国軍の塹壕を叩き潰してから数日後、帝国蒼島軍が全面降伏した事により蒼島の戦いが終結。皇国軍の華々しい勝利となった。私と南條は敵本拠地を発見したとして陸軍大本営から「功五級金櫻勲章」の叙勲を受ける事になった。つまり、私の考えていた「勲章ものだな」というのは現実になったという事だ。そんな訳で私はしばらくぶりに軍服に袖を通す事となった。
「南條少尉及び七尾少尉。貴殿らの蒼島の戦いの武功に対し勲章が与えられる」
師団長殿がそう読み上げると南條と私の左胸に勲章を付け、私と南條は敬礼をした。叙勲を受けるのは気分が良いが、どうも緊張してしまうのだ。
これでしばらくはやる事が無くて平和だなと考えていたが私は非常に面倒な噂を思い出した。現在、皇国は国民政府の近くに迺天という租借地を持っており迺天軍が駐屯しているのだがそこの総監「石岡謙治」が国民政府の領土を少し頂こうとしているらしい。だがそんな事をしたら国民政府も黙っていないし国民政府と戦っている隙に連邦が迺天に攻めてくるかもしれない。つまり両挟みになってしまうという事だ。敵が苦しむのを見るのは別に問題は無いがいざ自分たちの国となるとそれは非常に問題だ。もしも迺天軍が迺天で何か行動を起こしたとしたら大本営も何かしらの対処をしなければならない。でなければ面倒な事態に陥る。つまり、私は再び戦場に行かなければいけなくなるという事だ。噂であれば良いのだが。
そんな感じで蒼島の戦いで勝利を治めてから数ヶ月後、七尾は軍大学にいた。というのも士官学校を卒業してから1年程経った士官は1度強制的に軍大学を受験させられる。仮に不合格であっても再受験出来るが受験出来るのが少尉と中尉だけのうえ、軍大学を卒業しないと中佐から上に上がれないのだ。
「しかしよく私が合格したと思います」
「そう自分を卑下しない方が良い。実力があったから入れたんでしょ?」
「栗林殿は優しいですね」
「敬語はやめて。名字だけで良いから。数少ない同性なんだからさ」
そういえば受験日の1ヶ月前からは睡眠時間が4時間を切っていたな。我ながら良く頑張っていたな。七尾はそう思い出していると何かに足を引っ掻けて分厚い教本を数メートル先に投げ飛ばし、それが私たちを横切る男の顔に命中してしまった。
「すみません!大丈夫ですか?」
私がそう聞くと彼は自身の顔をさすりながらヒビの入った丸眼鏡を拾う。
「しばらくぶりだな。七尾」
「南條か。すまない、眼鏡壊しちゃったな」
「別に気にするな。避けられなかった俺が悪いのだから」
「弁償させてくれ。そうしないと気が済まない」
「駄目だ」
そう言うと南條は足早にその場を立ち去ってしまった。七尾は少し寂しい気持ちになりながら分厚い教本を拾い、栗林を見ると少し困り顔になっていたので理由を訪ねると栗林は私と知り合ってから私が何度も教本を落としていると指摘してきた。確かに軍大学で使う教本は辞書並みに大きく分厚いのが多く、私のような幼女が持つには苦労する。さて、どうするか。私は少し考えると簡単に解決法が浮かんだ。リュックに入れれば良いのだ。そうだ、何故そんな簡単な事を思い付かなかったのだろうか。そうしていると栗林に「何か良いの思い付いた?」と尋ねられたのでその案を伝えると納得した表情を浮かべながら私の方を見ると思い付くのが遅いと言う。確かにそうだ。もっと早くそれを行っていれば南條の眼鏡が壊れる事は無かったのだろう。そう思うと自身の頭の回転の遅さを思い知らされる。まだまだ私も経験不足だな。もっと色々な事を知らなければ。
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