ハーメルン
起きたらマ・クベだったんだがジオンはもうダメかもしれない
第十話:0079/05/09 マ・クベ(偽)と無理難題
ヒルドルブ不採用にしといてこんなの造ってるとかちょっと正気を疑うのだが。
頭を抱えながら執務机に戻ると、絶妙なタイミングで通信室から連絡が来た。
「…閣下、キシリア少将から通信が入っているとのことです」
幾分硬くなった声音でウラガンがそう告げてくる。質問の前に連絡来るとか、嫌な予感しかしないんですが。
「解った、すぐ行く」
大急ぎで通信室に入ると、画面越しの美女は優雅にお茶を飲んでいた。あれか、紅茶なんかキメてるからあんな愉快な兵器造っちゃうのか、英国面に堕ちちゃってるのか。
「お待たせ致しました、キシリア様。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「先日連絡があった機体の件だ、今日辺り届くはずだと思ってな」
そう言って柔らかく微笑むキシリア様。今まで機体の補充で確認の連絡なんて無かったんだけどな。ああ、あれか?貴重な機体だから流石に気になったんかな?
「はい、たった今到着致しました。荷下ろしも確認しておりましたが、特に問題は無いかと。ご配慮頂きまして、このマ、感謝の念に堪えません」
「良い。この所精力的に働いているようだしな。聞いたぞ?ガルマへ忠告したのも貴様だそうだな?」
あれ、ガルマ様喋ったのか。自分で思いついたことにしとけば手柄になったろうに。素直な良い子に育っているんだなぁ。こりゃちょっとシャアに暗殺されちゃうのは可哀想になってきたな。
「そんな噂がある、と申し上げた程度です。実際に事をなしたのはガルマ様ですから、私が功績だと誇れる事など何処にもありません」
そう謙遜して見せると、面白そうにキシリア様は笑みを深めた。卵顔なせいもあってその表情は実に愛らしい。本当にこの人キシリア様なんだろうか。
「地上に降りて随分変わったな。そちらの水が合ったのかな?」
「食事は悪くありません。ただ埃っぽいのが頂けませんね、兵達も閉口しています」
そう言って肩をすくめると、ついには破顔して笑い始めた。
「貴様の口からそのようなジョークが出てくるとはな。地球は思ったより興味深い所のようだ。…近々そちらを視察しよう。私も直接確認したいしな」
最後の言葉に、すっと体温が下がるのを自覚する。え、もしかしてこれ史実イベントフラグ?
「し、視察でございますか?」
「ああ、今回の輸送であれも届いているだろう?」
アッザムですねワカリマス。
「あの大型兵器でしょうか?」
「うむ、技術部にルナタンクを地上用に再設計させた。MAという新しいカテゴリーの兵器になる」
同じ試作機でもどこかの白い悪魔と比較にならない残念さだけどね。
「MA…」
「今後のジオンにとって重要な機体だ。貴様に任せる。使いこなしてみせよ」
いや、無理だろ、って言えたら楽なんだけどなぁ。これ多分ガルマ様に功績挙げさせたご褒美感覚なんだろう。こんなん断ったら今後の陳情に響いてしまう。ただでさえこの所無理言ってたし。でも流石にそのままは危険が危ないから言質くらいは取っておこう。
「承知致しました。しかしここは月や宇宙とは勝手が違います。使いやすいよう手を加えることをお許しください」
「構わん、必要なのは使える道具だ。貴様の良いように使え」
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