ハーメルン
起きたらマ・クベだったんだがジオンはもうダメかもしれない
第十六話:0079/05/19 マ・クベ(偽)と女傑
「はは、捨てる神あれば拾う神ありってやつかねぇ。ツキなんて何処に落ちているか解らないもんさ」
去って行く大佐を見送った後、ブリッジに戻ってきたシーマ・ガラハウは、明らかに上機嫌な声音でそう言った。久し振りに見る真っ直ぐな笑顔に、部下達も戸惑いつつも何処か浮ついた雰囲気を出し始める。副官を自認する大男が、居ない間に受け取った補給リストを渡しながら、原因を確かめるべく口を開いた。
「随分とご気分が宜しいようで。何かあの大佐とあったんですかい?」
その言葉に、シーマは目を細める。今までの境遇からすれば無理の無い言葉だ、だが、今後はそうはいかない。不安の芽は早めに摘んでおくべきだと考えた彼女は、それを伝えるべく口を開いた。
「口に気をつけな、デトローフ。飼い主には少しでも気に入られる方が良いからね」
それが、自分たちを正しく評価し、欲してくれるような相手なのだから尚のことだ。
「へ、へえ?」
いまいち理解が追いついていない大男は不思議そうな表情を浮かべる。しかし気分が高揚しているシーマは、気にせず言葉を続けた。
「シケたアサクラのご機嫌伺いは終わりだよ。もっといい男を見つけたからね」
「あの大佐殿がですかい?」
不信を顔に貼り付ける部下に、口角を上げながらシーマは言う。
「あたしらを丸ごと面倒を見ると言い放つ、中々のお大尽さね」
そう言いながら、件の男をシーマは思い出す。切れ者でありながら熱くもあり、それでいてどこか隙のある良く解らない男。けれど、今まで会ってきたどの男よりも好ましいと、シーマは素直に思った。
「あれだけ情熱的に誘ったんだ、精々甘えさせて頂きますよ、大佐」
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