ハーメルン
起きたらマ・クベだったんだがジオンはもうダメかもしれない
第六話:0079/04/24 マ・クベ(偽)と鋼鉄の巨狼
「ここの絨毯はそれなりに高いのだがね」
こぼれたコーヒーを見やりながら、困った表情を作る男に、階級も忘れて口を開く。
「大佐殿、あんたが良い性格をしているのは十分解った。で?俺をおちょくるために呼びつけたのか?地球方面軍ってのは随分と暇な所なんだな?」
「それだけ怒っても発作が起きないようなら大丈夫だな」
返ってきたのは予想外の言葉。表情を変えぬまま手を放すことを要求する大佐に、自身のしでかしたことの重大さにおののきながら、こわばりかけた指から力を抜く。そして、大佐の発言の意図に気づく。そうだ、この大佐は最初に言ったでは無いか、自分のことを調べたと。ならば、今までの発言はつまり、激昂した自分が発作を起こさないかを見ていたと言うことか。否、それだけでは無いだろう。大佐はこうも言った。地上に降りても理解の追いつかない連中がいる。それは他の兵士達の事だろう。考えてもみろ。戦線へと組み込まれれば、今までなど比較にならない程、MSパイロット達と接することになる。それどころか協同する事だって幾度もあるだろう。その時向けられるであろう嘲笑や中傷に、自身が冷静に対処できるかどうかを見ていたのでは無いか。
それは、リングに上がるかどうかではない、リングの上で十全に力を発揮できるのかという問い。その事実にデメジエールは目の奥が熱くなるのを自覚した。この大佐は、この方は。俺が戦える男であるという点に一欠片の疑問も抱いていない。
そして最後に掛けられた言葉、正に殺し文句だ。
MSには荷が重い、けれどお前なら、お前達なら。こんな事は造作も無い仕事だろう?
足に力を入れろ、胸を張れ。例え視界がゆがんでも、まっすぐに目を向けろ。
完璧にはほど遠い、それでも今できる最善を。
負け犬はもう居ない。
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