ハーメルン
起きたらマ・クベだったんだがジオンはもうダメかもしれない
第七話:0079/04/29 マ・クベ(偽)と青いアレ

曰く、大幅な変更はパイロットの機種転換を困難にする。前線でいくらMSがあっても誰も乗れないのでは意味が無い。教習に用いられているザクと異なっているのではパイロットの養成時間が更に増加してしまう。などなど。
意見そのものは間違っていないのだが、そこは程度というものがある。
確かにデザインは大幅にいじられていたが、実のところ、この新型機の操作系やモニターといったもののレイアウトは殆どザクと変わっておらず、MSに搭乗経験のある人間からすれば、乗用車とトラックほどの差すら無い程度だった。
不幸だったのは、問題を訴えられた総司令部にMS搭乗経験者が皆無だったことである。
加えて機械的な知識もあまり持ち合わせていなかった彼らは、渡されたコックピットの比較映像を見て、大きく違うと錯覚してしまった。マさんの見せ方やプレゼンの仕方が見事であったのも手伝って、この事は極めて重大な問題であると認識してしまった総司令部は新型機の仕様要求にとんでもない一文を追加する。

“コックピットはMS-06Jと同様ないし、差異は10%未満とする”

実機稼働まで行っていたツィマッドは大騒ぎである。
たかがモニターやコンソールのサイズが変わった程度で大げさな。と思うかもしれないが、少し考えてみて欲しい。あんな複雑な挙動をするMSを、僅か数枚のペダルと二本のジョイスティック、そして幾つかのスイッチだけで操作できるようにするためには、その裏にとんでもなく大量の機材が詰め込まれているのである。そう、それこそ全く隙間が無いくらいみっちりと。俗にモニター1つのサイズが変わるだけで配線経路を引き直すのに一日かかる。とまで言われるMSコックピットを、丸々替えろなどと言われたツィマッドは当然のように再設計を余儀なくされ、その間にザクを地上用に手直しする形で造られたヤツが完成する。
そう、ジオニックの青くてザクとは違うヤツ、MS-07グフである。
正直用兵側としては首をかしげたくなるコンセプトの機体なのだが、何故かパイロット、とりわけエースと呼ばれるような連中にバカ受けし、早期配備の嘆願書まで送られてくる始末。トントン拍子で話は進み、なんと統合整備計画提唱の1月後、3月には正式採用が決まってしまう。ツィマッド社にすれば悪夢のような決定だったことは想像に難くない。
もしかしたらこの時のトラウマのせいであんな近接特化のギャンなんて設計しちゃったのかな?とか、その上そんな仇敵にギャンを渡されたあげくロクな戦果も上げずにぶっ壊された史実の開発陣の心情を慮ると、技術者の端くれだった身としては涙を流さずに居られない。が、今は俺がマさんなのである。そんなこと言えば火に油、良くて拳でお話しされるのがオチだろう。

「…そういえば、グフも配備が始まっているのだったな」

オデッサには配備されていないが、前線部隊にはそれなりの数があったはずだ。

「ウラガン、すまないが欧州方面軍司令部にアポイントメントはとれるか?兵站部のミハエル大佐に聞きたいことがある」




「マ大佐から連絡?一体何だ?」

ミハエル・ヘラー大佐は副官の言葉に首をかしげた。仕事柄、それなりに接する機会の多い人物ではあるが、それ程親しくしている訳では無い。そもそも実直を人間に置き換えたようなミハエルと陰謀を体現したようなマでは、正直そりが合わない。
先日の会議では助けられる形になったが、未だ苦手意識は払拭されていなかった。

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