STORY14 覇者は戦場を舞う――されど
戦闘区域に入るなり、見つけた消耗したトマ隊長達を捉え討ち取ろうとする未確認機の集団。
凶弾がトマ隊長達へと放たれようとした瞬間、未確認機の武装を携えた二振りの重斬刀で斬り落とし、敵機本体をも斬り伏せた。
「――そこまでだ」
自然と出た誓いの言葉。
それは当然未確認機達の蛮行をここまでにするという宣言。
そして、トマ隊長達を覆う絶望をここまでとし、必ずや希望をもたらすという不断の決意。
「――」
両者の間に割って入ったことで、この場に動揺が走る。
突然現れ、自分達の一角を瞬く間に切り崩した突然の存在に動揺する未確認機の集団は勿論。
突然の援護に来た味方の存在に動揺するトマ隊長達。
このまま敵には動揺し続けてもらいたいが、トマ隊長達にはそうだと困る。
補給物資の投下ポイントを送り、通信を開いた。
『テオドールです! 加勢にきました! 今送ったポイントに向かって下さい。そこで武器と弾薬、バッテリーの補給ができます!』
「テオドールっ!?」
「くっ!」
驚いた声を上げたのはトマ隊の誰か。
俺が来たという事への驚き、そして敵が動き出したという驚き。
敵の方が行動を起こすのが早い。
撃ってきた。
流石に驚き続けるほど木偶ではということか。
しかし、こちらは驚いていることを抜きにしても消耗しきって動くに動けない。
だからこそ、俺が打って出る。
これだけの数ならもしかすると無人機では……という考えも浮かんだが斬り伏せた未確認機は有人機。スキャンモードが確認できた情報ではいかにも傭兵崩れという奴らばかり。
機体を戦闘不能にしただけで命までは取ってないが、これから多数の敵と戦うことになる。
命を奪う可能性について思うところがないわけではないが、迷いは不要。蛮行を絶望をここまでにすると決意したのなら、その意思を貫くのみ。
決意を剣に宿し、敵を釘付けにせんと大立ち回りをする。結果、思惑通りに敵を釘付けにするとことは叶った。
このチャンスを逃さない。トマ隊長達に発破をかける。
『早く! 時間が惜しい!』
『しかし、テオドール! お前を残してなど!』
『そうだ! 子供を戦場に残してはいけない! 第一なんで来た!? お前がいくら腕が立つとしてもっ!』
隊員達の言い分はもっともだ。
しかし、そんなことを言っている場合ではない。
そのことを誰よりも理解してくれたのはトマ隊長殿だった。
『……了解した。テオドール君、しばしここは任せた! 分かっているだろうが、無茶だけはするな!』
『隊長!?』
『何を言っているんです!?』
『お前達こそ何を言っているんだ! 状況を考えろ! このまま我々がいてもテオドール君の足手まといになるのは明白。ならば、少しでも早く補給を済ませ、戦線復帰するのが賢明だろ! 何より、テオドール君ならこの絶望的な状況に希望をもたらしてくれる。私はそう確信した。だから、行くぞ! お前達!』
『りょ、了解っ!』
トマ隊長殿の言葉に引っ張られるように皆、補給ポイントへと向かってくれた。
これで思う存分、動ける。
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