△STORY15 覇者に訪れた拘束と言う名の休息
「うむ……」
自室でデスクチェアに腰かけながらディスプレイに映るドイツ軍基地での出来事、その後の経緯をまとめたものを眺める。
あれから数日経つがすっかり平穏を取り戻していた。
とは言え、被害はそれ相応。死人も出た。EOS部隊に機体の損失、人的被害がなかったのはせめてもの救い……というのは軽薄か。
人が死んだんだ。すぐさま、防衛に参加していれば被害はもっと抑えられていたなどとは言わない。言えはしない。だがしかし、次同じことがあるのなら同じ轍は踏まん。
今回のことをただの悲惨な出来事にしない為にも、流れた血をただの犠牲としない為にも、糧として前へ進んでいく。
実際、今回得られたものは大きい。
実戦経験、それによる稼働データ。新型一機をお釈迦にしただけの甲斐はあった。
それはトマ隊にも言えること。むしろ、今回のことが転機となったらしい。
『今回、我々は自分達がいかに非力なのか身をもって痛感した。だからこそ、もっと力をつける。強くなる。テオドール君、君のように!』
との言葉と共に数日しか経ってないにもかかわらず、訓練に励み余念がないとのこと。
いい傾向だ。彼らにも力をつけてもらえれば、いざと言う時は……。
だからこそ、尚更EOSの強化・発展は怠れない。
EOSの限界が見え、どこまでいっても場当たり的な応急処置だとしても何もせずにいて何になろう。できることに最善を尽くす。
ISについてもそれは同じこと。データは揃いつつある。“約束の日”は近い。
何より、ISこそが本命。
今回の黒幕と渡り合う為にも必要な力だ。
もっとも黒幕と定義しているが、まだ亡霊を掴むが如く確証は得られていない。けれど、あれだけの兵器、人員を用意できるところはそうはいない。
違っていたところでやることは変わらん。
「状況整理はこんなものでいいだろう。しかし……」
デスクワークの合間に休憩を兼ねた状況整理は済んだ。
なら、行動あるのみ。なのだが、デスクワークのみで出来ることは限られている。
現場、それこそ研究所やトマ隊長達がいる基地に赴きたいがそれは叶わぬ願い。
「……」
部屋の外から感じるよく知った気配。
控えるようで、それでいてこちらを監視するような感じ。執事長、ジェイムズのものだ。
本家アルベール一家というか、伯母殿がわざわざ派遣してきた辺り、叔母殿……いや、デュノア家女性陣の本気度合いの証なんだろう。
端的に言えば、ドイツ軍基地でのことが母上達に知られた。故に監視付きの自室謹慎。
ゲロったのは伯父殿。あのアルベール・デュノアともあろう人がこの様とは。惚れた女には叶わないとは分かるけども。
こればっかりは仕方あるまい。伯父殿には迷惑をかけた訳だし。
『払った代償は大きいがそれ以上に得られたものは多い。何より、今やお前は私以上の注目の的。丁度いい隠れ蓑になってもらうさ』
なんて叔父殿は言っていて迷惑をかけたことは気にしていなかった。
それどころではないというのが正解か。何やら、いろいろISを調べているようだ。
それに知られたのがふんわりとした程度のもの。何か危ないことに巻き込まれてきたんじゃないのかなといった。
大立ち回りしたことは知られていないだけマシだ。知られていれば、どうなっていたことか。
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