第8話 見えない変化、見える変化
━━プルルル……
「っ、と。電話?」
何の前触れもなく私のスマホから機械音が鳴る。電話だ。しかし私の電話番号を知ってるのは片手で足りる程度だし、その殆んどとは今日会ったばかり……いや。
「はい、もしもし?」
『シロちゃん? 昨日ぶりね。元気にしてた?』
「あぁ、アイドルネキ。はい、元気ですよ」
やはりというか、電話を掛けてきた相手はアイドルネキだった。しかし、手順は軽くとはいえ昨日打ち合わせしたばかりのはずだが……
「どうしたんですか? アイドルネキ。計画に変更でも?」
『んー、まぁ……そうね。それもあるわ』
「それも……?」
『えぇ。……んん、一先ず計画の変更について教えるわね。実は、移動手段の変更で当初の予定より早くそちらに着きそうなの。だいたい明後日の夕方過ぎにはそちらの近海に到着する予定よ。一週間と言っておいてなんなのだけど……変更出来るかしら?』
「明後日ですね。大丈夫ですよ」
私は基本的に暇人なので計画はどうとでも変更出来るし、元々こういう事が起こるのはお互いに折り込み済みな話だ。強いていえば東郷お爺ちゃんに話を伝えるくらいか。これは後で電話しておこう。
「しかし近海……? もしかして、船ですか?」
『流石はシロちゃん。察しが良いわね。えぇ、船よ。少し不安はあるけど、きっとシロちゃんを迎えるに価すると思うわ。楽しみにしててね』
「はい。楽しみにしてます」
私を迎える価する船……漁船かな? あるいは泥船か、イカダか。いやいや、アイドルネキの家は大きいと聞く。きっとお金持ちが乗っている様なボート……全長10メートルちょいぐらいのプレジャーボートとかいう奴に違いない。
うん、楽しみだな。あの手の船には前世も含めて乗った事がないし、一度は乗ってみたいと思っていたのだ。あのボートから釣糸を……昼はキツイから夜釣りを楽しむのもありだな! 実に楽しみだ。
『あぁ、そ れ と。シロちゃんに何か買って行こうと思ったのだけど……シロちゃんって服、持ってるわよね?』
「? えぇ、持ってますよ?」
当たり前だろう。服を持ってないとか、未開の蛮族じゃあるまいし。
『…………一応、聞くのだけど。どんな服を持ってるの?』
「んー……」
どんな服ときたか。そういわれると困るな。
何せ前世ではアウターとかトップスとか言われても分からないファッション知識ゼロ野郎だったし、今世でもそれは概ね変わらないのだ。それに興味もないとくれば、アルビノのせいで制限もあるときてる。だから私の手持ちの服は……えーと?
「…………パーカーと、ジャージと、ズボンと、ジャージと、下着が3、4枚に……後は、パーカーとジャージ? あぁ、それとパジャマの類いが3、4着ありましたね」
『━━━━』
何故だろう。電話の向こうのアイドルネキが凄まじい顔で絶句しているのが見えた気がした。正直に手持ちを言っただけなのだが。
『━━し、シロちゃん? じょ、冗談……よね?』
「いえ。正直に言いましたが」
『━━━━ねぇ、それ服、というか下着からして足りないでしょ?』
「いえ? 足りてますよ? 洗濯込みでローテーションに余裕がありますし」
『━━━━』
何度目かの絶句。なんだろう。私はそんなにおかしな事を言っただろうか? 普通だと思うのだが……
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