ハーメルン
ポケットモンスター 侵食される現代世界
第9話 見えない変化、見える変化

 東郷お爺ちゃんへの報告を済ませ、オレンの実をくれた老夫婦を含めた、近所のお爺ちゃんお婆ちゃん達にも報告し終わった夕方。
 私はポチとの散歩を終わらせ、テキトーな鼻歌を歌いながら上機嫌で夕御飯の準備をしていた。上機嫌の理由は……今手元にある桃色のきのみ、モモンの実が手に入ったからだ。

「~♪」

 近所のお年寄り達に挨拶するなかで、桃の木を植えている人から譲って貰ったのだ。突然出来てなんだか気味が悪いと言っていたから、簡単にモモンの実を始めとしたきのみについてレクチャーしたところ、最後には栽培も確約してくれた。他の人達も多くが栽培に賛同してくれたから、関東から帰って来た頃にはきのみが溢れかえっている事だろう。

「んー、そうしたらポロックやポフィンの試作も出来るかな?」

 機材はサッパリだが、材料には困らないはず。関東から帰って来たらそういうのに挑戦するのもありだろう。
 そんな事を考えながらモモンの実に包丁を入れて幾つかに切り分け、それを二つの皿に分けて盛る。私と、ポチの分だ。

「ポチー、ご飯出来たよー」

 私は自分の分を机の上に置き、ポチの分を目の前に差し出す。いつものメニューにきのみが追加されただけだったが、それはなんだか特別な物の様に思えた。
 ポチはその特別に躊躇したのか、私の方を見てくる。だが私が食べていいことを伝えると、真っ先にモモンの実に食い付いた。意外、そう感じる心。当たり前、そう感じる理性。

「……まぁ、これだけは食べやすいし、美味しいしね」

 私は席に着きながら、小さく切り分けたモモンの実を一つ口に放り込む。口に広がるのは素朴な、しかし純粋な甘さ。他のきのみではこうはいかないだろう美味しさだ。あるいは私が甘党だからか。
 そう思いつつご飯にも手を伸ばし、前世では考えられないスローペースで前世よりも少ない量のご飯を食べ進めていく。

「はむ。……んん?」

 半ばまで食べ進めたとき、ポチが私の側まで来ている事に気づく。お行儀の良い普段のポチからすれば珍しい動きだ。見ればポチの分はきのみ含めて空になっており……ポチの視線の先にあるのは日付が変わった深夜に収穫したオレンの実。まさか、食べたいのだろうか?

「えっと……食べる?」

 迷いは暫く。しかしポチの視線に負けた私はオレンの実を二つ、ポチのお皿の中に落とす。絶対美味しくない。そう思いながら。
 差し出されたきのみをポチが食べるか悩んだ様子だったのは、私の半分以下。彼女は実にアッサリとオレンの実に食い付いた。一かじり、二かじり。人間からすればマズイと言っていい代物をポチはさくさくと食べ進める。……美味しいのだろうか? いや、あんなデタラメな味覚パラメーターで美味しいはずがない。
 そう疑念を蹴飛ばし、私は私のご飯を食べ進める。

「グルゥ……」
「満足そうだね。ポチ」

 結局食べ終わるのもポチの方が早く、彼女は「満足だ」とでも言いたげに体を休めていた。実にリラックスしている。

「……ん? 何かポチ、変わった?」
「グルゥ?」

 気のせいだろうか? 心なし大きくなった様な、毛並みが良くなった様な……それとも声か? うーん……? 何か変わった様な気がしたんだが……何なのだろう?
 疑問がどうしても解消されず、お皿を片付けた私がポチを見ながら思考に潜ろうとした━━そのときだ。

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