第15話 加速する前進
「シロちゃん。彼らシロ民に何か助言はある?」
「助言、ですか……」
普通に考えるのなら体力を削って状態異常にするのがベターだ。しかし件のポッポの体力を削ろうにもバトルで削れるポケモンがいない。グラエナであるポチではオーバーキルだろうし、生身の人間がポケモンの体力を削れるとは思えないからだ。ならば状態異常だといきたいがこれも同じく駄目。バトル以上にやれるポケモンがいない。八方塞がりだ。
……いや、待て。ならなぜ私はポチをゲット出来たんだ? ポチが特殊だった。なら、何が特殊だった……?
「……友情ゲット」
「友情、ゲット?」
「はい。友情ゲットです。戦う事ではなく、別のやり方でこちらを認めて貰う事でボールに入って貰う事です」
「……なるほど。シロちゃんがポチちゃん相手にやったのは、それね?」
「はい。……ただ、野生のポッポとどう友情を築けば良いのかは、サッパリですが」
「いえ、充分よ。後は彼らが上手くやるでしょう」
そう言うとユウカさんは凄まじい速度でスマホを操作していく。恐らくシロ民に友情ゲットすべしと書き込んでいるのだろうが……私はそれに何も言えないし、それこそ祈る事しか出来なさそうだ。これ以上の助言は思い付かず、ポチと共に参戦する訳にもいかないのだから。それに、夜には総理の説得も待っている。……ここは、役割分担か。
「さ、て……シロちゃん?」
「な、なんですか……? ユウカさん?」
シロ民に伝達し終わったのか、スマホをしまったユウカさんが私の肩を押さえる。その顔は満面の笑みであったが……しかし、嫌な迫力があった。まさか。
「総理と会うのだもの、おめかしは……必要よね?」
「そ、それは……」
「シロちゃん?」
「必要、です」
負けた。3秒と持たなかった。即落ちだった。
だって、仕方ないだろう? おめかしが必要なのは事実なのだ。……この格好でもお嬢様してるし、充分な気もするのだが。
「駄目よ。それは自宅でくつろぐ為の物で、出掛けるには不向き。事今回の様な話なら失礼にもなるわ」
「そう、なんですか……?」
「えぇ、そうよ」
そうなのかぁー
私は内心ため息を吐きながらそう納得する。ユウカさんの言う事だし、更にああもキッパリ言い切ったのだ。間違いないのだろう。
とはいえ慣れない物は慣れないので、必要以上のおめかしは断ろう。そう思いながら私はユウカさんに背を押されて部屋を後にし、別の部屋に向かった。
━━化粧を勧めるユウカさんに断固として抵抗するまで、あと数分。
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