第28話 変わるモノ達
━━九州地方。
━━鹿児島県。
━━古武術道場。
「あぁ、そういう訳でな、戦友達の姿を借りたナニカは居た。そして今はワシもポケモントレーナーというわけだ。……あぁ、あぁ。分かっている。任せておけ。ん? ふむ━━」
不知火白が育ての親ともいえるお爺ちゃんと電話をしていたとき、当然ながら件のお爺ちゃんもまた電話を手に取って孫ともいえる少女との話を楽しんでいた。
にこやかに、穏やかに、近況を語りつつ。
子供が居ない自分に出来た、予想外の可愛い孫。そんな相手との会話は彼にとって心安らぐ時間であり、何よりも優先すべき事であった。それこそ、『客』の相手を放棄する程度には。
「あぁ、あぁ。ではの。くれぐれも周囲には気を付けるんだぞ」
病気ではなく、周囲に気を付けろ。そういってイマイチ使い慣れない様子でスマホを操作し、通話を終了させる彼。
歳は百を越えているにも関わらず、全く弱々しさを感じない……それどころか覇気すら漂わせる老人。名を東郷。不知火白曰く東郷お爺ちゃんと呼ばれる人物だ。
「……シロちゃんですか?」
そんな老人に声をかける男が一人。
鋭さのある視線を投げるその男は、正式に確認された超能力者であり、シロ民の中でも一目置かれる人物……シロちゃんガチ勢の一人、通称筆頭犬兵だ。今日は東郷に招かれた立場として活動していた。
そんな筆頭犬兵に東郷は端的に言葉を返す。その通りだが何か、と。
「いえ、噂通りの仲良さだと思いまして」
「……孫だからな」
「なるほど」
そんな会話をしつつも視線は合わさず、二人揃って道場の廊下を進んで行く。道場から聞こえる奇声にも似た怒声や掛け声を聞き流しつつ、やがて二人は離れの一室にたどり着き、一息ついた。ここなら盗み聞きされまいと。
そして、部屋に凄まじい“プレッシャー”が満ちる。
「さて、話しの続きだが……何か仮説があるのだったな? 今の我々について」
「━━はい。一応は」
“プレッシャー”の出どころは筆頭犬兵の目の前。和服姿の老人からだ。
まるで重力そのものが増えたかの様な感覚に教われながらも、筆頭犬兵はなんとか口を開いて言葉を発する。この道場に来る前、無理を言って老人と合流して見た桜島で見た光景について。あるいはそこで体感した自分達の力について。それを端的に。
「恐らく、スーパーマサラ人化しているのだと思います」
「ふむ……?」
「漫画やアニメの登場人物の様な、あるいは神話の英雄な様な、超人的な存在になった。そう考えて頂ければ」
「なるほど。超人か」
スーパーマサラ人化している。そんな意味不明な言葉を吐いた筆頭犬兵は、自分の言葉を自分で噛み砕いて老人へ説明する。スーパーマサラ人とは、いわゆる超人なのだと。
“10万ボルト”を食らっても死にはせず、“こうそくいどう”すら使いこなし、時にはオーラをまとって空を飛ぶ……そんな説明に納得したのか、東郷はふむと頷いてそれなら覚えがあると続けた。
「少し前からそうだったが、ここ最近は特に身体の調子が良くてな。若い頃と同じ様に動けるのだ。しかも剣に……そう、気がのりやすいのもそうか。おかげでカマイタチじみた事も出来る」
「え、えぇ。恐らく間違いないかと」
身体が若返った様だ、それはまだ分かる。東郷氏は100歳を越えるご高齢だが、まぁ人間そういう事もあるだろうと。しかし、カマイタチを出せる。そんなバトルマンガの登場人物もかくやといわんばかりの発言に、筆頭犬兵は口元を引きつらせてしまう。これがスーパーマサラ人の力を得た、伝説のスーパーSATUMAかと。
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