2-2 カルデアにて②
カルデアには多くの部屋があるが、流石に百を超える英霊たち全員分は賄えない。
それ故に、気の合う者同士や、血縁者、またはクラス別など適当に組んで同室となってもらっていた。
王様たちやらは、周りの従者たちの声もあり、個室を占拠して勝手に弄っているようだが、それはまた特別な話であろう。
キャスターを肩に担いだのは良いが、自室に置いておくとまたひと騒動起きそうな予感がしたセフィロスは、医務室か何処かにでも放り込むことを考え、廊下を歩いていた。
丁度朝食の時間ということもあり、食堂と離れたエリアは静まり返っている。
「随分無様な恰好じゃないか。
そのしぶとい男が沈黙というものを知っているとは、驚いたよ」
嘲笑を含んだ声に足を止めると、進行方向に壁に背を付けた英霊の姿が見えた。
浅黒い肌を裂く歪な傷跡を露とした英霊は、朧な金の瞳をセフィロスへと向ける。
「……」
「まあ、その男が使えない状況ならば……編成の見直しが必要だろう」
「編成?」
「おや、確認していないのかね。
今日の探索は、あの宝条という研究者を撃退した時とほぼ同じメンバーだ」
「……そうか」
ずっとトレーニングルームにいたために確認していなかったが、どうやら今日は何かの任務があるらしい。
そしてその編成の中に、自分が組み込まれていることを知る。
忙しいことだ、と溜息を吐いたセフィロスに、エミヤオルタは愉快そうに口角を上げた。
「その様子では、任務先すら知らないのだろう?」
「……」
「喜ぶと良いさ。
アンタが乗り込もうとしていた、研究所。それが今回の任務先だ」
「レイシフトでは、ないのだな」
「ああ。山を下りるそうだ」
どうやら、今度はカルデアから仕掛けるらしい。
ふとリツカが言っていた朝の会議という言葉を思い出した。
恐らくそこで決定したのであろうことは、想像に付く。
「……その男の部屋は、この階の突き当りから3番目の部屋だ」
「憶えているのか」
「ふん、何処で聞いたかは知らんが……。酷く口の軽い輩がいるものだ。
まあいいさ。最近は……記憶が持つんだ。
元々壊れかけの体だ。どうせ一時の気紛れだろうがね」
「……そうか」
「そうでなくとも、このエリアで一番喧しい部屋でね。
……嫌でも憶え直されていただろう」
セフィロスがぽつりと呟いた言葉を、キャスターをはじめとした英霊たちから情報を得ているのだと認識したのだろう。溜息を零したエミヤオルタは、やれやれと肩を竦める。
その何処かキザっぽくも見える仕草は、英霊が疎む赤い弓兵を彷彿とさせた。
「集合は二時間後だ。……精々、遅れないようにしたまえ」
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