2-4 宝条研究室にて②
ちりちりと頬を焦がす熱を感じ、はっと意識を浮上させる。
どうやら気を失っていたようだと、周りを見渡せばそこはカルデアではなかった。
一言で表すならば赤い世界。溶岩と炎が唸りをあげる灼熱の世界であった。
煮え立つマグマに囲まれた岩の上で体を起こしたキャスターは、そこに満ちる魔力に事態を把握する。
「おいおい、マジかよ。
強制連行先が、灼熱地獄とはなァ……。
いや待てよ、確かに身に憶えもなくはない……か?」
頬を伝う汗は、尋常ではない熱によるものかそれとも。
ぺたりと肌に付く髪を払う。赤が支配する世界で、キャスターの深い青の髪は鮮やかに浮き立っていた。
不意に、ゆらゆらと揺れていた陽炎がその動きを増す。
それに連動するように大地が揺れ、地響きが溶岩を波打たせた。
咄嗟にルーンを浮かべ、跳ね踊る火の玉から身を守ると、ぼこぼこと沸き立つマグマの動きが大きくなっていく。
そして、火山が噴火するように大きく跳ね上がった火の海から、巨大な影が飛び出て来たのだ。
「おおっと、……ったく、丸焼きにする為に呼んだんじゃねえんだろ?」
5mはあるだろうか、人型の巨人は纏っていた炎を消した。
露わになった巨人の姿に目を凝らすと、長髪の頭には右側に一本、左側には複数の、角が生えているのがわかる。
煌びやかな宝石が飾られた冠と腕輪が炎の明かりを受けて、揺れるように輝いた。
炎の中に出現した、髑髏や骨で出来たこれまた巨大な玉座に腰を下ろすと、頬杖を付きキャスターを眼光炯々と睨む。
威圧的なその魔力は、キャスターが知るそれとは違っていた。
「ふん、……人間とは、実に弱きものよ。
此れしきの炎にも耐えれぬか」
「残念だなおっさん、もう人間じゃあねえんだわ」
「同じことよ」
重々しい厳かな声からヒシヒシと伝う魔力に、キャスターは目を細める。
「我が名はイフリート。炎を司るもの。
異国の魔術師よ……我の炎を耐えしものよ。
お前に、知恵の炎を授けよう」
「……」
「そう警戒するな。そちらの世界に興味などありはしない。
……ただ、そうだな。これは余興だ」
「余興……だと?」
「此方のものが、紛れ込んでいるだろう」
「……セフィロスのこと、か」
「ふん。それは外皮の名であろう」
「外皮……?」
「厄介なことになっているようだな。
アレはアレであって、アレではない」
「……さっきから、何を言っていやがる」
イフリートという存在が、堕天使または悪魔であり天界から追放されしものであることは、何処かの本で読んだ記憶があったので知っていた。
くつりと低く喉を鳴らして笑う巨人を、キャスターは訝しげに見た。
「あの男には、二つの魂が宿っている。
……お前も感じている筈だ」
「確かに、異なる魔力が二つ流れているのは……知っているさ。
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