33話 UC0079年2月 キシリアの策謀
サイド3 ギレン邸
人類史上最大規模の宇宙艦隊決戦となったアクシズ戦役が終わって、二週間が過ぎようとしていた。
ジャブローを目指し宇宙を進んでいたアクシズは、連邦宇宙艦隊の主力を壊滅させた事により地球の衛星軌道でその動きを停止し、地球軌道の支配権は連邦軍からジオンへと移った。
ジオン政府はアクシズ戦役での華々しい戦果を武器に、連邦軍に対し、休戦条約の締結を申し入れた。
敗北を喫し、疲弊した連邦にとって、それを断る気力はもうなかったかに見えた…。
やあ…諸君。ギレン・ザビである。
一晩にして宇宙軍の大半を失い指揮官であるレビル将軍も捕虜になるという誰もが想定していない状況に陥った地球連邦は、混乱の極みにあった。
艦隊の主力と衛星軌道の支配権を失った連邦宇宙軍はジオンとの即時休戦を主張し、一方今だに無傷の戦力を保有する連邦地上軍はジオンとの徹底抗戦を主張していた。
そして肝心の連邦政府首脳部は月と各サイドの支配権を失った責任をとることを誰もが嫌がり、責任者を決める事すらできずただ右往左往するのみであった。
…大丈夫か?連邦政府…。
そう言いたい所だが我がジオンも連邦軍を笑えない状況となっていた。そう。レビル将軍が脱走したのである。
原作の知識の事もありデギン公にも場所を知らせず秘密裏にズム・シティの某所にレビル将軍を収監していたのだが、そこを連邦の特殊部隊により襲撃され将軍を奪還されてしまったのである。
情報の秘匿を最優先にして少数で警備していた事が裏目に出てしまい、警備にあたっていた人員は特殊部隊により全滅。
そのため将軍の脱走に気がつくのが遅れてしまい、気付いた時にはすでにサイド3から脱出した後だった。
そのままルナツーへと入ったレビル将軍はかの有名な「ジオンに兵なし」の演説を行う。
原作とは違い月とサイドの大半を掌握して9割近い戦力を保全しているジオン軍に対して何が兵なしだよとか思っていたら、その証拠として示されたのが我が軍で使っているダミーの事だった。
どうやら我等ジオンはこのような偽物を使い数を誤魔化さねばならないほど疲弊しているらしい。
いや…確かにダミーに兵は乗っていないし連邦軍を誤魔化す為に用意したものだけどさ…。その気になればアクシズをジャブローに落とす事もすぐ出来るんだよ?いや、悪影響の方が大きそうだからしないけど。
それに地球軌道に宇宙要塞があれば地上攻略も容易になるからね。
結局宇宙軍の有力者であったレビルが徹底抗戦派にまわり、連邦首脳部も宇宙植民地を失った責任を取りたくないため条約交渉は決裂。
休戦条約は調印されず、戦争での大質量兵器とNBC兵器の使用禁止、それに捕虜への待遇や大都市への無差別攻撃禁止を定めた軍事条約の調印のみにとどまった。
…極秘であったはずのレビルの収監場所を連邦が知り、厳重な警備をすり抜けてルナツーまで逃げおおせた事といい、やはりキシリアが暗躍したのであろうか。だが流石と言うべきか何一つ証拠がない。
現段階でキシリアを罪に問うのは難しいだろう。
メイの父親の時といい秘密工作には高い能力を発揮するな。
しかし…まさか自分の私欲のために休戦交渉の妨害までしてくるとは思わなかったが。
今後に備え何らかの手を打たねばならないな。
少なくとも地球侵攻作戦の全権を任せる事などできん。
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