プロローグ
ー都内某港ー
「はぁぁぁぁああ!!!」
気合いの入った正中線突き。
薄明かりが照らす宵闇の倉庫街、その一角で幻想的な光が迸る。
ノースリーブにホットパンツ、ニーハイ、ヘッドセット、各所に菱形の模様が施された、正にサイバネティックという言葉がしっくりくるようなステージ衣装を纏ったツインテールの少女。
その拳1つで黒い“影”のような物体を吹き飛ばした。
吹き飛んだ影は後ろに連なる同族を更に5・6体巻き込み、50メートル程飛んだところでまとめて地に落ち霧散する。
「相変わらず豪快ですね」
「私の持っている力だと、これが一番効率がいいんです」
「ふふっ。まゆも負けていられませんね」
後ろから声をかけたのは真紅のドレス衣装を纏った少女。
両腕には棘の付いた薔薇の茎が巻き付いており、大胆に露出した柔肌に痛々しくも魅力的に食い込んでいる。
トンッと地面を蹴るとまるで“魔法”のようにふわりと宙に浮き上がり、その両手にピンクの光の粒子が纏われた。
空に掲げた右手を振り下ろせば纏った光の中から紅いリボンが、まるで鞭のようにしなやかに放たれる。
倉庫街にはまだ多くの“影”が徘徊している。
パッと見ただけでも30体はゆうに越えているだろう。
その1体1体に鋭くも綺麗なリボンが強打していき、順に霧散していった。
当の少女は右、左、右、とステージでダンスを踊るかの如く軽快に、そして流麗に、ファンを虜にする“アイドル”のように舞っていた。
「さすがに数が多くて面倒だね。ボクと蘭子で60体は倒したっていうのに……まゆ、コイツらを一カ所に集めてくれないか?」
「束ばk…リボンの乙女よ、さすれば魂を通わせた我と飛鳥で、彼の者たちに至高の鎮魂歌を捧げようぞ!」
先に声を掛けたのは長いエクステを付けたクールな少女。
青いフリルが特徴的な紺色のステージ衣装を身に纏っており、その右手には蒼く光る宝石がはめ込まれた西洋剣が握られている。
対になる少女と合わせるなら衣装の色は青紫と言った方が良いのだろうか。
そして分かる人には解る熊本弁を話す少女。
赤紫のフリルが際立つ紫色のステージ衣装を身に纏い、同じく右手には西洋剣。
こちらは紅く光る宝石がはめられている。
エクステの少女と比べると、こちらの衣装は赤が強めの紫色。
「まゆちゃん、目が怖いですよ。蘭子ちゃんもちゃんと言い直したんですから、許してあげましょう?」
「ぁ……あらやだ。しょうがないですね、今回は有香さんに免じて許してあげます。でも、お2人はまゆのおかげで実力を発揮出来ているんですよ? ですから、一番にプロデューサーさんに誉めてもらうのはまゆですからねっ」
「無論!」
「……いつものことじゃないか」
束縛、と言い掛けたところでリボンの乙女ことまゆの目からハイライトが消えた。
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