ハーメルン
僕と剣姫の物語
神託

 身動きも取らずに、頭は彼女の言葉を再生し続けていた。
 ──何も失うこと無く戻ってこい。
 なぜだかわからないが、その言葉は重しのように僕の心に沈み込んでいった。
 でもそれも、どうしてか悪い気分じゃあない。
 どちらかと言えば、心地よい。
 それがロキの言葉だっていうのが、少し癪なのだが。
 やはり彼女は僕の(おや)なのだ。
 
 「───あぁ、分かったよ。その約束、(ロキ)に誓って、必ず守る」
 「良し、ええ子や」

 言質は取ったぞ、もし死んだら飛んでく魂追っかけてどこにも行けへんように檻にぶち込んだるからな!
 ロキはそう言ってビシィッと僕を指さした。
 
 「そいつは勘弁願いたいな。まあなんだ、任せろ」

 苦笑しながらそう言って、僕はサムズアップした。
 剣呑な雰囲気を収めたロキはそれにカラカラと笑って、良し!十華!と僕を呼ぶ。
 今度は何だ、と目を細めれば彼女はドンッと瓶を取り出した。
 ───酒瓶である。

 「今夜は呑むで!」
 「えぇ、今からぁ…?」
 「あったりまえや!ほら、行くで十華! 宴は何時だって突然、やで!」
 
 何だその言葉は。
 熟語っぽく言ってもそんな言葉はねーよ。
 でも、まあ。
 たまにはこういうのも悪くない。
 飛び乗ってきたロキを背負いながら、部屋を出る。
 ホームでも一番天辺に位置する部屋から飛び出した僕は風をきるように走り出した。
 あちこちの部屋の扉を開け放ち、瞬く間にホーム中を駆け抜ける。

 「宴の時間だぁ──────! 今夜は特別にロキの奢りの上に、特上の神酒(ソーマ)が飲めるぞォ────!!!」
 「なっ……!? そこまで出すとは言っとらんわ──!?」
 
 神酒(ソーマ):簡単に言ってしまえば、このオラリオでも屈指の知名度を誇る、曰く神域の酒。
 つまるところ、超高級品である。
 具体的に言えば、僕等のような一級冒険者用に作られた武器が買える値段。
 桁は最低でも6。ちょっと良さげなのを買えば余裕で7,8である。
 そしてロキは、この酒を秘蔵していた。
 日がなちびちびと、一人で楽しんでいるのだ。
 でもまあ、良いじゃあないか。
 皆で楽しもうぜ。
 そう言えばロキは「ははは」と苦笑した後に「少しだけやぞ……」と絞り出した。
 
 「言質は取ったぁ───!! 集まれ集まれぇ──!」

 ぞろぞろと、団員たちが顔を出す。
 もう一度「宴だぁ!」と叫べば、それだけで把握した団員たちは一斉に騒ぎ始めた。
 その声は、当然フィンやヴァレンシュタインたちの耳にも届く。
 ───そう言えば。
 ヴァレンシュタインは酒を禁止されているんだったな。
 ちょっと後で呑ませてみようと、僕はそう思うのであった。

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