ハーメルン
伊井野ミコは告らせたい~不器用達の恋愛頭脳戦(?)~
第2話 石上優は感謝したい
思えば、自分の人生も少しは良い方向に向いて行っていると言えるのかもしれない。
確かに、中等部の時は妙な正義感を振りかざして手痛い失敗をした。
その失敗は今でも、同級生達からの容赦の無い嫌悪という形で引き摺っている。
けれど、自分の理解者が居ない訳じゃない。
自分がひた隠してきた事をこともなげに見抜き、自分に生徒会という居場所を与えてくれた尊敬する先輩。
名家中の名家のご令嬢で、ひたすら怖いけれど何だかんだで勉強や恋愛の相談に乗ってくれる先輩。
形容し難い性格をしているけれど、あの遠慮の無さと殴りやすいボディがある意味心地良く感じる先輩。
こんな自分にも本当にナチュラルに優しくしてくれる、可愛さと包容力に溢れた先輩。
――――あと、危なっかしくて見てられないような残念さのクセに、
日頃ぎゃいぎゃい煩くてこっちの苦労も知らずに突っかかってくる。
けれど、同級生の中では唯一自分を中等部時代の失敗の事で疑ってかからないあいつ。
真実をひた隠している自分の自業自得とも言えるが、誰にも理解されなくて1人で部屋にこもってたあの頃から比べると、
今の自分の人生はかなりマシになったと言えよう。
いっときは、高等部への進学なんて出来なくても構わないし、何故か進学できた後も、別に留年しても構わない……と考えたりもしたけれど。
今は自分を理解し、期待をかけてくれる人達がいる。
それもこれも、高等部に進学出来たお陰なのは否定出来ないだろう。
今は、確実にこう断定出来る。
『高等部に上がれて良かった』と。
――――だからこそ、石上優は、時々ふと考える――――
何故自分は、高等部に上がれたのだろう?
他の奴らと同様に荻野にまんまと騙されていたあの教師は、『反省文を出さない限り絶対に進学は認めない』と物凄い剣幕でいきり立っていたのに。
あの教師が頑固なのは、生徒の間でも有名だった。
中等部の頃から勉強が苦手だった自分が、あの教師が主張を曲げたくなるような存在であった筈がない。
何故、主張を曲げるに至ったんだろうか?
以前は、会長か四宮先輩辺りが何らかの手助けをしてくれたのかと考えていた。
だが、ある時会長に聞いてみた所によれば、
会長達が介入したのは自分が高等部に進学してからとの事だった。
となると……ひとつの可能性が浮かんでくる。
自分の知らない誰かが、高等部に進学出来るよう働きかけてくれたのだろう。
両親ではない事もハッキリしている。高等部への進学が何故か認められた事を通知された両親の、意外そうだが安堵したような表情は忘れられない。
じゃあ、一体誰が、自分の為に動いてくれたんだろう?
いくら考えても思い付かない。高等部に進学する前にも、自分をそこまで気にかけてくれていた人物が居たんだろうか……
もし誰なのか解ったら、その人にはこう言いたい。
『ありがとう。あなたのお陰で、僕は救われた』と――――。
石上優は、時々想いに耽るのであった。
話は変わるが、その石上優が在籍している秀知院学園1年B組には、ただでさえ秀才達が集うこの高校の中でもとびきりの秀才がひとり在籍している。
高等部に進学してから、出題範囲の広さと難しさに定評のある高等部の定期考査において1位を堅守し続ける生徒!
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