地球からの留学生
それに何より。
今日は大事な用がある。
「あ! 待って!」
教室を出ようとした瞬間、留学生がそんな台詞を大声で叫んだ。
いやまさか。
別の誰かに呼びそかけただけだろうけど一応、と振り返る。
そこには大急ぎで駆けつけてきたであろう留学生の姿があった。
「ま、待って待って! 急いでるかもしれないけどちょっと待って!」
「…………っ」
手首を掴まれて、強引に引き止められる。
急いではいないが……授業が始まって早々に帰る陰キャの姿が、陽キャには用事があって急いでいるように見えたようだ。
そりゃそうだ、彼女たちの中では放課後というのは友達と遊ぶ時間であり、楽しく一緒にだらだらとお喋りする時間であり、別れを惜しみながら共に下校する時間なのだから。
「あのね、連絡先交換してくれないかしら?」
「ぇ……?」
な、何で? と首を傾げると、ヒカリは当たり前かのようにその理由を告げた。
「えーと、クラスメイト全員の連絡先を聞いて回ってるのよ! 後は貴方だけだわ!」
「……私、通信端末、持ってないから」
何だそのリア充の極みみたいな発想、怖い。
あまりにも自分と違いすぎる彼女と出来るだけ距離を置きたくて、咄嗟に嘘を吐いてしまった。
ていうかさっきからクラスメイトたちの視線が痛い。
絶対「誰? あの子?」とか「あんな子いたっけ……?」とか思われてるに違いない、という被害妄想がメロディルーナを襲う。
(私は、目立ちたくないんだから)
もう放っておいてくれ、と無言でヒカリの手を振り解いてメロディルーナは教室を早足で出て行った。
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