初めてのバトルアリーナ
「ふぅ……無駄に疲れたー……」
ああいうのは、本当に勘弁して欲しい。陰キャにはテロみたいなものだ。
そんなことを呟きながら、眼鏡と鼻まで覆った巨大マフラーがトレードマークの少女――メロディルーナはテレパイプから姿を現した。
その瞬間、眼前に広がるのは赤と青の照明以外は左右対称なドーム状の広場。
最近は本当に此処に来ること以外人生に楽しみが無いな、とそんなことを考えながらメロディルーナは辺りを見渡す。
独特の賑わいや空気感が心地よい。
戦いの場なのに、楽しげな雰囲気すら見えてくる此処は――そう、
「おぉー! 『バトルアリーナ』じゃない! PSO2の中で見たことあるわ! そういえばまだプレイしたことなかったわねー、貴方はよく此処に来るの?」
「うん、まあ参加はせずに観戦だけだけど面白いし良いストレス解消に……ってうわぁあああああ!?」
思わず女子らしくない悲鳴をあげながら、飛び退く。
しかしそれもしかたあるまい、あまりにも自然な動作・口調で先ほどテロをかましてきた女――ヒカリが隣に立っていて親しげに話しかけてきたのだから。
「な、な、なんで此処に……?」
「テレパイプのログ見れば何処に行ったのかなんて一発で分かる! ってアコちゃんに教えて貰ったわ」
「あ、アコちゃん……?」
多分クラスメイトの誰かだろう。
「って、そこはどうでもいいよ……どうして着いてきたの?」
「貴方と友達になりたいからよ!」
「…………何で?」
意味が分からない――思考回路が違いすぎる。
それともこれがオラクル人と地球人の違いだということなのだろうか。
勿論そんなことは無いのだが、地球人と初めて会ったメロディルーナがそう勘違いしてしまうのも仕方ないだろう。
ヒカリは眉間に皺を寄せながら首を傾げるメロディルーナを見て、一瞬キョトンとした後「ふーん?」とジト目になって、呟く。
「……憶えてないんだ?」
「えっ? 何? 今何て言った?」
「ねえねえ、折角だしプレイしていかない? バトルアリーナ!」
即座にパッと明るい表情に切り替えて、ヒカリはそんな提案をした。
半ば強引にメロディルーナの手を取って、バトルアリーナ受付カウンターまで歩き出す。
「ちょ、ちょっと待って、私は観戦専門で……」
「え? そうなの? 何で?」
「何でって……」
真っ直ぐに、ヒカリはメロディルーナのことを見つめてくる。
彼女と視線を合わせるのは、何だか、何と言うか、変な感じがする。
元々人と目を合わせるのが苦手なメロディルーナだが、この娘相手だと殊更目を合わせていられない。
眩しい――そう、眩しくて、見ていられない。
宮元ヒカリ。
「だって……私運動苦手、だし、とろくさいし、鈍間だし……」
「ふぅん、でも観てるだけって詰まんなくない?」
「そ、そんなことないよ! 私達オラクルの一般人ってアークスの戦闘を生で見れる機会なんて殆ど無かったんだけどね? バトルアリーナが一般解放されたことでアークスの戦いの一端を間近で観れるようになって、それからはもう私ずっとバトルアリーナ通ってるの! だって凄いのよ? スポーツとはいえ超人的な力を持った人たちの真っ向勝負! 考え抜かれた戦略! 相次ぐ大逆転劇! さいっこうよもう!」
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