第5話
武器屋で思わぬ時間を掛けてしまったが、このカッカラという杖だが中々良いな。実際に持ち歩いて思ったが、魔術の発動体としては使えないものの汎用性は高そうだ。
まぁ発動体が必ず要る訳じゃないからな、アレは赤ん坊のオシャブリみたいな物で慣れれば無くても問題が無い。
逆に高位の魔術師達は発動体を通す事によるタイムラグを嫌って使わない連中が多かった。
因みに僕の格好だが一般的な貴族か裕福な平民層が着ている布の服を着て腰にロングソードを吊るしている。
修道服を着て杖を持つイルメラを従えているのだが、端からはどういう関係と思われているのだろうか?貴族の子供とお供か?それとも姉弟か?
武器屋から大通りを歩く事15分、漸く当初の目的である冒険者ギルドに到着した。
「漸く冒険者ギルドに到着したか……流石に王都に構える本部だけあって立派な建物だな」
冒険者ギルド本部、三階建ての総大理石造りの白亜の建物で重厚感が溢れる。入口には全身鎧を着込んだ警備兵が二人立哨しているので非常に入り辛い感じだ。
イルメラがズンズンと進んでいくので僕はその後ろに付いていく。家を出た時とは立場が逆だな。
彼女の後に付いて正面入口を潜ると一階は凄く広いホールになっている、3フロア吹き抜けのホールだ。記憶に残るルトライン帝国の王宮並みの豪華なホールに入って直ぐ右側の壁際を見てギョッとした……
「アレは、モンスターの剥製?何故あんな物が展示されてるんだ?ゴブリンにコボルド、オークにオーガーにヘルハウンド?」
一瞬警戒したが冒険者ギルド本部にモンスターが襲撃してくる訳もないので落ち着いて観察すれば、精巧に作られた剥製だった。
「御主人様、アレは現物見本として駆け出しの冒険者達に教えているのです。冒険者に成り立ての人達は聞いた事はあれども実際に見た事の無いモンスターって結構いるんですよ。駆け出しの冒険者がオークやオーガーに出会ったら死んじゃいますよ」
近くに寄ってマジマジと見る。確かに百聞は一見にしかずで分かり易い。剥製に出来ないスライムやゾンビ系は40号キャンバスに絵画宜しく精密に描かれている。
但し書きにはモンスターの習性や弱点、剥ぎ取りの素材の部位と買取値段、ノーマルとレアのドロップアイテム等が事細かく書かれているので非常に分かり易い。
確かにゴブリンを討伐してこいって依頼でゴブリンってどんな奴だ?って言葉で説明するのは難しいよね。
一回でも遭遇すれば忘れないけれど最初は誰でも素人だからな、冒険者ギルドって親切だな。
一通りモンスターの剥製と絵を見ると王都周辺に出没するモンスターが頭に入った。流石は王都周辺だけありランクの高いモンスターは殆ど居ない。精々がオーガーくらいだな。
オーガーも生息地帯は王都から随分と離れている山岳地帯だから討伐に行くのも数日単位の移動が必要だろう。
「ここで展示されているモンスターは自然発生系なんです。魔法迷宮に出没するモンスターは倒すと魔素となって消えてしまいドロップアイテムを残しますから……」
「魔法迷宮は分かるが……ドロップアイテム? なにそれ?」
僕の生きていた時代にも魔法迷宮は有ったし中にゴーレムを配したり出来たが、ソイツ等を倒してもアイテムなんてドロップしなかったぞ。
イルメラは僕の質問には答えず微笑むと新規受付と書かれたカウンターに僕を案内した。彼女は良く出来たメイドだが偶にお姉さんみたいに振舞う事が有る。
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