ハーメルン
百合の少女は、燕が生きる未来を作る
誕生日「獅童真希の真なる希」

 七月二十四日、今日は真希の誕生日である。
 誕生日会の準備をしている寿々花や夜見たちとは別に、百合と結芽は真希の相手をしていた。
 相手をしていると言っても、結芽のお遊びに真希が付き合っているだけなのだが。


「真希おねーさんなんか強くなってない?! ……負けたーー!!!」

「ボクだって日々精進しているからね」

「私だって、最近は真面目に任務やってるもん!」

「まあまあ、結芽も落ち着いて。真希先輩、次は私と立ち合いませんか?」


 百合の誘いを受けて、真希が構える。
 二本の内の一本、宗三左文字を抜いて百合も構える。
 同時に写シを張って、どちらともなくきり結んだ。
 最初の攻防は一進一退と言った感じだったが、徐々に百合が押され始める。


 真希の歳は今年で十七歳、あと約一年で刀使としての適齢期を終える。
 だが、真希の実力を衰えることを知らず、成長し続けていた。
 ……百合自身も成長を続けているが、真希の成長速度は目を見張るものがある。
 しかし、百合も負けず嫌いな所があるので、本気で相手をする。


 力任せにも見える振り下ろしを、体を少し逸らすだけで避けてカウンター。
 逆袈裟斬りのカウンターを真希は迅移で回避する。


 攻防はその後も続き、結局決着は着かなかった。


「ふぅー。やっぱり、真希先輩の剣は重いですね」

「力任せってことかい?」

「違いますよ! 物理的なものではなくて、精神的なものです。…信念、そう言った方がいいですよね? 誰かを助けるために強くなりたい、誰かの助けになりたい。真希先輩の強い想いが剣から感じられます」

「……でも、ボクは道を間違えてしまった」

「そうですね。先輩は自分の体を罪で汚してしまった。けど、先輩が力を欲したのは、誰かを助けたいと言う優しい想いからです。その想いの在り方は、きっと間違いではありません」


 上から目線の言葉になってしまっただろうか? 
 心配そうに真希を見つめる百合だったが、その思いは杞憂に終わった。
 笑っていたのだ、嬉しそうに顔を綻ばせて。
 それが分かった百合は、そっと真希の傍を離れた。
 今の彼女を邪魔するのはあまり宜しくない。


 そう判断したのだろう。
 この判断が間違いではないことを、百合はとうに知っていた。

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 紫は未だ療養中で来れない代わりに、朱音が紫から渡されたプレゼントを渡した。
 御刀の手入れ道具だ。
 ……刀使の中で知らない者は居ない、とまで称される程の有名所で買われた物に真希が息を飲んだ。


 十数万はくだらない額の物を貰ったら誰でもそうなる。
 この場に居る約二名は違うが……


「あら、私のとお揃いですわね」

「私のも同じ奴です」

「えっ?! ふ、二人共、こんな高級な物を使っているのかい? ボクも御刀はキチンと手入れするために値が張る物を買うけど、ここまでは流石に……」


「別にそんなに高くありませんわ?」
「私も、寿々花先輩と同じ意見です」


 あまり感じたことはないが、二人は列記としたお嬢様だ。

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