刀使ノ日記念「百合のオリジン」
「…………それでも嫌だ! 私は…ゆりを守る! だって、刀使だから!」
……刀使だから。
その言葉が、百合の心に響く。
同時に、頭の中に声が直接響いた。
(助けたいんでしょ? 守りたいんでしょ? なら戦いなさい)
(でも、今の私じゃ…)
(…誰よりも強くあれ、それ以上に誰よりも優しくあれ。夢神流剣術の教えの一つよ。知ってるわね?)
(……うん)
(なら良いわ、戦いなさい。きっと今のあなたなら応えてくれる、本当の意味で刀使になろうとしてるあなたならっ!)
次の瞬間、振り下ろされた鉤爪が結芽に当たる寸前、何かが鉤爪を受け止めた。
勿論…百合に決まっている。
宗三左文字と篭手切江、二つの御刀を交差させて受け止めたのだ。
今まで応えてくれなかった篭手切江が、ようやく応えてくれた。
(私が、誰かの為に戦う力を欲したから?)
…理由など、今はどうでもいい。
それより、先にするべき事がある。
「…私の友達に…気安く触れるなぁッ!」
怒りの声と共に八幡力で鉤爪を押し返し、体制が崩れた所で瞬時に迅移で接近し切り刻む。
持続的に迅移を使ってるのかと思わせるほど上手く迅移を繋ぎ、素早く荒魂を斬り裂いていく。
苦悶の叫びが木霊するが、百合は手を緩めない。
三十を超える傷が付いた所で荒魂は倒れ、荒魂はノロとなりスペクトラム化する。
「…終わっ…た?」
「やった! やったよ! ゆり!」
抱き着いてくる結芽のお陰で、ようやく自分が勝ったことを理解し始める。
疲れのあまりへなへなと倒れ込みそうになった所を、結芽が支えた。
「大丈夫?! どこか痛いとこある?」
「問題ない…よ」
「そっか、良かった…。……それよりさ、さっき私の事友達って言った?」
「そ、それは……」
気恥しそうに頬を赤らめる百合。
追い打ちをかけるように、結芽は問い詰める。
「ねぇねぇ~、そのまま結芽って呼んでよ~!」
「……名前呼びは…ちょっと」
「…あ~あ~、友達とお揃いにしたかったのにな~」
チラチラと様子を伺いつつ、結芽が毒づくように言う。
百合は恥ずかしさ故か、先程より赤く頬を染めて小さく呟いた。
「ゆ…結芽」
「えっ? なんて?」
「も、もう言って上げない!」
「ちょっ! ま、待ってよ、冗談だって~!」
百合は手早くノロの回収を近くまで来ていた綾小路の生徒に頼み、家への道を小走り気味に歩く。
結芽は笑いながら、百合の後を着いていく。
その日、少女は刀使になった。
[9]前 [1]後書き 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:6/6
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク