ハーメルン
INFINITY WITCHES ~無限大の魔女~
Epilog まだ始まったばかり
「…何故ですか!?」部屋中に、若い女性の大声と何かを力一杯叩く音が響く。
机を拳で叩いたその女性の顔は、怒りと憤りで歪んでいた。
彼女と机を挟んで正対するのは、各国の軍を束ねる立場にある重要人物たち。
彼女──タスクフォース118のコマンダー、グッドフェローの怒りを買ったのは、机に投げ出してある書類のようだ。
「理由をお聞かせ願えますか。何故、このような命令を!?」
怒声に近い彼女の声に、困ったような顔でリベリオン人の男性が説得を試みる。
「そうは言われてもね、ミス・グッドフェロー。これは既に決定された事項なのだよ」
「しかし!こんな命令、承服しかねます!これは、我が隊だけでなく、他の多くの部隊の士気にも──」
「なにも分かっとらんようだな、君は」グッドフェローの言葉を遮るブリタニア人男性。
「これは高度な政治的判断が求められる事案なのだよ。一介の現場指揮官でしかない君が口を出せる問題ではない」
「ですが!!」いきり立つ彼女に、今度はオラーシャ人男性が牽制を掛ける。
「いいかね、これは我が国連軍司令部、ならびに常任理事国代表の総意なのだよ。逆らうならば、君の指揮官権限剥奪も辞さない」
国連軍司令部だけなら、何らかの交換条件でこの命令を撤回させることもできたかもしれない。
しかし、海千山千、二枚舌外交がお手の物の各国要人が結託したこの状況では、グッドフェローは彼らに逆らうことも出来ず、目の前の理不尽な命令を呑み、うなずくことしか出来なかった。
《ボーンアロー1、ウェイポイント2ヘッドオン》
東京上空を哨戒飛行中の私は、すっかり口なじんだ台詞を無線に吹き込み、いつも通りの進路をとる。
バンカーショット作戦終了から、早いもので4ヶ月がたった。
私達は今、扶桑に拠点を置いて活動している。旧新東京国際空港─成田飛行場に私達は恒久的な司令部を置き、旧首都近郊の空中哨戒を担っているのだ。
何故私達ボーンアロー隊がユージア軍との最前線、ヨーロッパ地方ではなく東京にいるのか?
それは作戦終了から数週間後、国連軍総司令部から下された命令が原因だった。
怒りをあらわにしたグッドフェローが伝えてきたのは、「ボーンアロー隊の任地異動、それによる任務内容の変更」だった。
早い話が、「前線に出るな。後方で基地防衛等を行え」と言うことだ。
司令部曰く、「高い戦果を挙げたウィッチを戦闘で失えば、国連軍全体の士気が損なわれる。英雄となった彼女らを失うのは好ましくない。また、いざというときのために戦力は温存しておくに限る」とのことだった。
しかしそれはどうせそれは表向きの理由だろう。どこの馬の骨とも知れない寄せ集めの傭兵部隊なんかに、戦果を奪われるのが惜しくなったに違いない──というのは、グッドフェローの談だ。
実際、私たちが抜けた後の穴埋めには、様々な国から“自らの意思で参戦した”とされる義勇兵ら──事実上の派遣部隊が参加しているらしい。そして、それは戦局の泥沼化を招いていた。
確かにバンカーショット作戦は成功したが、それ以来大きな戦果は挙がっていない。
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