ハーメルン
仮面ライダージオウ~Crossover Stories~
闘魂!輝きの焔!
「朝陽いぃぃぃっ!元気か!おにぎり持ってきた!今日は鮭もあるぞ!」
「うん、元気。ありがとう一晴」
あれ以来、食料を持ってくる係は一晴になった。
彼は底抜けに明るく、朝陽とも気が合う少年だった。話すのが不得手で遊びにも付き合えない朝陽が相手でも、心から楽しんでいるのが伝わってきた。だから朝陽も、生まれて初めて楽しいと感じるようになった。
相変わらず外を歩けたりはしないが、朝陽の生活はそれだけで一変した。誰かがいるだけで息をすることに価値を感じられるようになった。
それだけに、一晴がいない時間は一層寂しく感じるようになった。
もし一晴が帰る時、自分もついて行けたなら。こんな小屋を抜け出して一晴と居られたなら。そんなことを夢にまで見るようになった。
そんな日々が続いて数年後のことだ。一晴は変わった話題を持ち出して来た。
「これ見てくれよ!この石みたいなやつ!」
「なにこれ…目玉?」
「だよな!朝陽もそう見えるよな!友達の家の蔵にあってよ!それで色々調べてみたらうちの蔵にもそれっぽい書物があったんだ!」
「友達…」
朝陽が言うには、かなり昔にこの内浦にやって来た異邦人が残した書らしい。その目玉は『眼魂』と呼ばれ、何やらとんでもないものだという。
それから一晴はその眼魂の謎にのめり込むようになった。たまに内浦を飛び出してまでその異邦人の足跡を追うこともあり、朝陽に会いに来る頻度が少しだけ減った。
それからまたしばらく経った。その日はいつにも増して上機嫌で元気に、朝陽の小屋に一晴はやって来た。
「わかったぞ朝陽!この眼魂の正体、誰が作ったのか!お前にも見せたいものがあるんだ!今日の夜は雲が厚い!外に出るぞ!」
言われたのは、これまたとんでもない一言。
外に出るぞと言われても全く実感が湧かなかった。別に出れなかったわけじゃない。月明りなら肌も耐えられるが、転んだり獣に襲われればそのまま死んでしまう。出る理由が無かっただけだ。
でも、その日は一晴が久しぶりに来てくれた。思いに応えたくて、意を決して外に出ることにした。
小屋の戸の前に立ったのはいつぶりだろう。体に包帯を巻き、一晴の手にひかれ、戸の先の世界に踏み出した。
「……っ…!」
「どうだ、大丈夫か?歩けるか?」
「うん…大丈夫。あぁ、うん…やっぱ駄目かも。ちょっと泣きそう」
「どっか折れたか!?肌大丈夫か!?」
外界と別れたのは物心もつかない頃。忘れていたのだ、こんなにも世界が広いという事を。
包帯を撫でる風を、足裏が踏む土から生を感じながら、一晴に連れられた場所にあったのは眼の紋章が刻まれた岩の板だった。
「聞いて驚け!これはなんと別世界のものらしいんだ!」
「別…世界…!…?」
この世界のことすら知らない朝陽にとって未知の概念だ。
「眼魂を作ったのもその別世界の人間で!この石板は別世界と通じてたんだ!この眼魂を使ってみたらなんと!眼魂を作った本人と話せた!」
「作った本人って、何言ってんのさ。そんな昔のもの作った人なんて生きてるわけない」
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