#10 交わされる約束
アインズは何を言われているのかわからなかった。
聞き方が悪かったのか、アンデッドを恐れ過ぎているのか、それともプライドをズタズタにしてしまったのか、相手はさっきまでとは違う人間なのではとすら思える。
「そうか、わかった……」
アインズは何一つ分からなかった。
フラミーも捨て犬を見るような目で男を見ている。
「あなた、どこから来たんですか?お名前は?」
全裸にさせられ、混乱しているのかもしれないので、出来る限り優しく、わかりやすいように質問し直していた。
「は。スルシャーナ様はお分かりかと思いますが――」
そうアインズを見るその男の様子はアインズをスルシャーナと言う者と間違えているようだった。
「私はスレイン法国が特殊部隊。陽光聖典隊長を務めるニグン・グリッド・ルーインでございます。この度は神々への数えきれないご無礼をどうかお許しください。そして、何卒法国へお戻りくださいますよう、伏してお願い申し上げます」
ニグンと名乗った男は深く首を垂れた。
「お前のいう通りアインズ様とフラミー様は神にも等しきお力をお持ちの御方々よ。最初から命を差し出して――」
「アルベドよ、黙れ。勝手なことをするな。ニグン・グリッド・ルーイン。私は神でもスルシャーナという名でもない。先に言った通り、我が名はアインズ・ウール・ゴウン。この名はかつて知らぬものがいない程に轟いていたのだがな」
そう答えるアインズにニグンは食い下がった。
「し、しかし!貴方様のお力、お姿、どれをとっても……!!スルシャーナ様、私から神官長達へ話し、法国の誤ち全てを改善させます!!必ず御身の理想とする国へと導くことを誓います!!求められれば何であっても差し出します!!どうか、お戻りくださいますよう……どうか再び我らをお導きいただきますよう……この通り!」
伏せるニグンは頭を強く地面につけた。
腰に一枚布を巻いただけの風呂上がりのおっさんスタイルで繰り広げられる土下座を見かねたフラミーがアインズへ耳打ちした。
「この人の事情はよくわかりませんけど…とりあえず何日か待ってもらって、その法国という国について調べてからお返事したらどうです?」
「まぁ、別に今すぐ決めなくたって良いわけですもんね」
アインズは頷いてからニグンへと向き直った。
「ルーインよ。今すぐどうするかは決められぬ。私は一週間後に再び…そうだな。この野に来よう。その時にお前の言への答えを聞かせる。その時まで大人しく待て。できるな」
ニグンは涙に濡れる声でもちろんだと、さらに深く頭を下げた。
「では行け」
よたよたと立ち上がるとニグンは何度も振り返り、自分の部隊の元へ戻って行った。
「なんだか妙に疲れた。」
「本当ですね。でも、見てください」
アインズはそう言うフラミーの視線の先を追った。
夕暮れが終わり、紫色に染まり始めた空には星が瞬くのが見えた。
「――綺麗ですね」
「はい!本当。とっても綺麗」
二人はニグンが服を着直す姿を極力見ないように空を眺めた。
その後、一行は転移門でナザリックへ戻り、しもべと守護者を呼び出した玉座の間にてアインズは新しき名を告げ、先ほどのニグンとの話を伝えた。
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