#14 疲弊した従属神
謎の気配を感じた気がして、女──番外席次・絶死絶命は中庭を注意深く睨め付けていた。
「誰かいるの……?」
しかし、返事はない。
気配を感じた方へ足を運ぼうとすると、さっきまで寝ていたであろう神官長達が小走りで通り掛かった。
「おお番外席次よ、良いところに!お前も陽光聖典の報告の場に立ち会うのだ!」
「……うるさいわね。気安く話しかけないでちょうだい。後で行くわ」
神官達は何か言いたげな顔をしたが、番外席次を置いて去っていった。
何となく気配を感じた場所に近付くも、そこには何もいない上、誰も踏んだこともないような柔らかい土と、天に向かってピンと生える若草達があるだけだった。
辺りを見渡すが、中庭にはさわさわと静かな風が渡るだけだ。
(気のせいか……)
生まれて初めての感覚に戸惑ったが、神殿内がこれ程までに騒がしいのもまた、初めてだった。
(この私がいつもと違う神殿の様子に高揚しているとでもいうの?)
自嘲するように笑うと神官長達の向かった方へ立ち去った。
+
草むらの隠蔽を完璧に行ったアウラは神殿内部を駆け抜けていた。
早くアンデッドの元へ行き、皆をこちらへ呼び寄せねばならない。
大した攻性防壁が張られている様子もなく、遠隔監視ができるのであれば大人数で効率悪く移動する必要もあるまい。
そしてたどり着いた、神殿の最奥。
長く広い廊下の先に、まるで世界とその先を切り離すかのように二枚の分厚く重厚な扉がぴたりとしまっていた。
アウラは鍵などがかかっていない事をさっと確認し、その向こうにたしかに死の気配を感じると、空中に向かい腕で丸を作る。
すると転移門よりも巨大な闇が廊下に出現し、死の支配者・アインズ・ウール・ゴウンが足を踏み出してきた。
隙なく辺りを見渡し、安全をもう一度確認すると闇に手を入れた。
その手を取りフラミーが出てくると、付き従うように守護者達も続々と闇を潜ってくる。
一人ハニワ顔の見たこともないNPCと、どこで合流したのかマーレも来ていた。
アインズはしばし目の前の──周りの廊下やニグレドの監視越しに見た物達に比べ異様に精巧な扉を眺めてから、アウラに声をかけた。
「──アウラよ。一時は肝が冷えたが、よくやったぞ」
アインズの称賛に頭を下げた。
「ありがとうございます。……だけど、アインズ様……。マーレと二人でやり遂げられず……わざわざ御身にお出ましいただいてしまい、申し訳ありませんでした」
「良いのだアウラ。そしてマーレ。お前達の働きは見事だった。さぁ、この中にいる者を連れて帰ろうではないか。──フラミーさん」
パンドラズ・アクターの進言により、アンデッドは可能であれば捕獲となった。
上半身より長いくらいの巻物を携えたフラミーがスッと前へ出る。
「どこからどこまでがコレに認識されるフィールドかわからないんで、中で発動させますね」
「お願いします。俺は一歩遅れて、すぐに入りますから、時間を稼いで下さい。万一中の者がワールドアイテム保持者でそれが効かなかった場合、マーレとアルベドと共に相手を抑え、一時退避します」
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