ハーメルン
進化の光 フラスコの世界へ
第3話 巴武蔵


第3話 巴武蔵

ガーリオンの格納庫へと向かうエルザム。本来ならこの時間は執務を行っている時間だが、部下からの緊急連絡で書類仕事を切り上げ、早足で格納庫へと向かっていたのだ

「なんじゃと!このEOTIの副総帥である。アードラー=コッホに従えぬと言うのか!」

格納庫に入るなり聞こえてきた怒声にエルザムは眉を顰める。怒鳴り声を上げているのは小柄な老人であり、怒鳴られているのはツナギ姿の武蔵だ。小柄なアードラーは武蔵を見上げながら、頭の線が切れるのでは無いかと言う勢いで怒鳴り続ける

「いやあ。そんなことを言われても、オイラ居候だし、あんたの命令に従う義務は無いんだよ。爺さん」

首から下げていたタオルで汗を拭いながら、冷静に自分は従う理由が無いと説明する武蔵。だがその言葉にアードラーは顔を真っ赤にさせ、唾を撒き散らしながら更に怒鳴り始める

「爺さんじゃと!貴様誰に向かって「アードラー副総帥。貴方こそ何故この場にいるのですか?ビアン総帥から武蔵君に接触される事は禁止されているはずでしょう?」……っち」

だが流石にそれ以上は見てられないとエルザムが止めに入ると、アードラーは舌打ちをし、ガーリオンの格納庫を後にする。武蔵はほっとした表情で笑う

「いやあ、すんません。エルザムさん」

「いや、構わないよ。大丈夫だったかね?」

武蔵がアイドネウス島に来て1週間。エルザムの部隊の預かりの客賓と言う扱いの武蔵だが、働かざる者食うべからずと整備兵の手伝いなどをして過ごしていた。馬鹿と言っていたが記憶力は案外優れていて、手先も器用と言うことで客賓でありながら整備兵の見習いと言う扱いになっていた

「あの爺さん。なんか苦手だなぁ、敷島博士に似てるから」

武蔵から出てきた新しい人物の名前。武蔵はあっと呟いてから敷島博士の話をする

「原爆とか水爆の研究をしてた人で、自分の作った武器で惨たらしく死ぬってのが夢って言う危ない人ですね」

「……君の知り合いも中々個性的だな」

引き攣った顔で笑うエルザム。武蔵の知り合いとして話の中に出てくるのは、空手道場を荒らしていた実戦空手の達人である「流竜馬」。IQ300にして学生革命家だった「神隼人」と非常に癖の強い人物が多かったが、今回の人物も癖が強いと言うよりかは危険人物と言う感じだった。前者2人に関しては特殊戦技教導隊の面子と比べればさほどとエルザムは感じていた。腕は良いが癖の強い面子が多かったので、そう言う人間にはある種耐性のあるエルザムだからこその感想だろう、なおエルザム自身も癖のある人間と言う側に入っていると言う事も忘れてはいけない

「エルザム少佐、すみません。私の責任です」

「いやあ、あんたは悪くねえよ。オイラも興味を持ったのが悪かったんだ」

自分の部隊の人間が駆け寄ってきて謝るが、武蔵がそれを庇う。エルザムはどう言う事か事情を問いただす

「シミュレーターに乗ったのか」

話を聞くと昨日整備班の荷物の運搬を手伝い、そのついでにAMのシミュレーターを見つけたので、勧められた事もあり武蔵がシミュレーターを使ったのことだった

「いやあ、はは。興味があったもんでつい」

頭を掻きながら笑う武蔵。規格はまったく異なるが、武蔵も機動兵器のパイロットだったから、どんな物かと好奇心を抑える事が出来なかったようだ。その結果がアードラーの目に止ってしまった言うのは明らかに武蔵の落ち度だったが……

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