ハーメルン
『三好in戦極姫』
第十三話




「うーん、美味いな。やはり平蜘蛛で入れてもらうと味も変わるのか?」
「変わるわけないでしょ」

 あれから半年、将和は政務の殆どをサボっていた。いや、飯盛山城での公務はほぼ終わらしているが長慶への具申等は殆ど行っておらずそのためサボっているとの言い方である。
 軍議には参加しているが何も意見を言わずに終わっているので長慶達も何かあったのかと不安になっているが将和は「いや、特に意見は無いし」と言って飯盛山城に戻るのが最近の日々である。だがそれでも和夏達には情報収集で動いてもらってはいる。
 この日も朝から政務を終わらせた将和は暇を見つけて信貴山城の久秀の元に茶をしに来ていた。

「あれから半年……大きな変化は無いわね」
「内だと常備兵が漸く5000に到達したくらいだな」

 なお、常備兵を一ヶ所に集めるのではなく現時点では芥川山城、飯盛山城、そして阿波の三ヶ所に常備兵を集めて城下町が形成され始めていた。

「信長の美濃攻めは苦戦しているようね」
「当主の一色龍興は愚息だがその配下は優秀な武将達が勢揃いしているからな」

 将和は和夏達忍びを通じて竹中半兵衛に接触しようとしたが半兵衛は三好家の傘下入りを拒否していた。それでも将和はめげずに複数忍びを通じて三好家入りを打診したがなしのつぶてだった。

「後もうちょい半兵衛を勧誘してみるよ」

 謝る和夏に将和は苦笑するのであった。そこへ話題の和夏が現れた。

「将和君」
「どうした和夏?」
「済まない、私達の失態だ。竹中半兵衛が織田家入りをした」
「あらあら……よっぽど織田家のが魅力に感じたのかしらね」
「いや……もしかしたら武将かもな(やはり秀吉の引き抜きか。歴史の修正力というやつか)」

 クスクス笑う久秀を他所に将和はニヤリと笑う。

「まぁ来ないなら仕方ない。それでもう一人の引き抜きはどうだ?」
「此方も今一つ、色好い返事はもらってはいないな」
「ふむ……まぁ気長にでいいよ」

 そう言う将和だった。そして芥川山城にて軍議が開催される。

「四国から連絡が来た。……長政が病で先頃亡くなった……」
「長政殿……」

 長慶の報告に皆を目を伏せる。将和も幼少の頃から長政には世話になっていた。

(大敵の政長を自身の手で討てたし感無量だったろうな……)

 将和は長政の冥福を祈るのであった。

「それと、阿波国守護の細川持隆も病で亡くなった」
「あん? 細川持隆が?」

 長慶の言葉に将和は首を傾げた。

(確か持隆って史実だと実休が暗殺したとか言われてだろ。何で病死……?)

「理由は分からないが病死だそうだ」
「……ちょっと臭いな」
「兄様?」
「……阿波に戻って調べてみる。たまたまの偶然ならそれで良いが……三好家を貶める罠とは言い切れんからな」
「分かった。兄様に任せる」

 そして軍議も領土攻略に移行する。

「最近、陶を討った毛利の躍進が凄まじい」
「あっという間に周防・長門を抑えたもんな……」
「毛利への対策が急務かと思います」

 一存達が議論を交わすが将和は特に議論の中に入ろうという気配はしなかった。それを見た長慶が将和に視線を向ける。

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