第二十話
雑賀衆を調略に成功した三好家はそのまま畠山討伐に乗り出した。無論、畠山高政もそれは承知しており軍勢を準備したが豊富な資金がある三好家には端から勝てる見込みはなかった。
勝敗は僅か三日で決した。高政は先手を打とうと高屋城を攻めようとしたがその行く手を阻んだのが14000の兵力を率いている三好将和である。
この高屋城の戦いで高政は戦力の大半を喪失し紀伊の岩室城へ逃げ帰るが調略していた雑賀衆、根来衆等に包囲され高政は一族と城兵の助命を条件に自害するのであった。
なお、そのまま将和は紀伊へ侵攻、雑賀衆と根来衆と共に紀伊の国人衆(堀内党等)の粛清を行いつつ領地を占領していくのであった。
「鉄砲集団の根来と雑賀を丸ごと召し抱えとは……」
「武将待遇にしたら目の色変えたな。傭兵集団でも正規での雇用は妙薬だぞ」
「兄さん凄いな……」
芥川山城での茶会で将和は長慶らとそう話していた。
「熊野水軍も順次、冬康の安宅水軍に組み込ませていく」
「まぁ紀伊は根来と雑賀に任せるとして……」
「問題は本願寺……」
長慶の言葉に将和は点てられた茶を啜る。
「門徒衆は約二十万は下らん。しかも農民だけじゃなくて武士も浄土真宗を信仰しているからな。三河国の一向一揆という前例がある」
「……根絶やしはどうです?」
不意に発したのは久秀だった。だが長慶は首を横に振る。
「駄目だ。根絶やしは時間が掛かる」
「……手を結ぶしかないな」
史実の信長包囲網で本願寺は約十年に渡って信長を苦しめた。しかもその被害は半端なく一門衆や家臣を多数失っている程である。(例 織田信広 織田信興 氏家直元等)
「兄様、交渉役を願い出来るか?」
「ん、任された」
将和は頷き、久秀、長逸ら共に本願寺と交渉に当たるのである。
「よう来なさったな。まぁ先に茶でもどないや?」
「頂きましょう」
浄土真宗本願寺派第11代世宗主の顕如はにこやかに将和らを歓待した。
「しかしあんさんも大変やな、剣豪将軍に目を付けられてなぁ」
「かもしれませんなぁ」
顕如からの軽いジャブに長逸はピクリと肩を動かしたが将和は苦笑しながら茶を啜る。
「あぁ堅苦しい席ちゃうから楽でええよ」
「忝ない」
空になった将和の茶碗に顕如は再び茶を点てて入れる。
「あんさんの事や、三好家と仲良うせんかという事やろ?」
「如何にも。しかし、本願寺はそう易々と三好家と昵懇は出来ん……そうだろう?」
「せやなぁ、ワシらは王法為本に沿って行動してるからさかい。ワシらの王道は今のところは将軍家になるわ」
「でしょうなぁ……」
「やけど……縁を結ぶ事は出来るでしょ?」
「ほぅ……」
顕如の言葉に将和はうっすらと笑みを浮かべる。
「実は今度、配下におる川那部の娘が池田勝正の家臣に輿入れをする予定やったんよ」
「予定やった……先日の山崎の戦いで討死をしたと?」
「正解やな。あんさんとこの藤堂が池田勝正を討ち取ったのはええんやけど、ついでにその家臣も首を取られてもうてな」
「その娘を……ですな?」
「せやな。ワシとしてはあんさんに嫁いでもらいたいけども……戦になりそうやから止めとくわ」
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