第八話
「んー、少しは休憩するかな」
湯築城で午後の政務に取り掛かっていた河野通直は一息入れるため足を崩す。
「……数年前までは伊予全てに掛かりきりじゃなかったなぁ」
通直は三好家から支援の手が差し伸べられるまでは村上通康と伊予中を逃げ回ったりしていた。
「ほんと今じゃ考えられないわね……それにしても……」
通直はまだ机に置かれた大量の書物を見て溜め息を吐いた。まだまだ終わりそうにないのは明白である。溜め息を吐いた通直は再度机の置物と向き合うのであった。
「いや、この種子島は今までの種子島より強力やで将和はん……」
飯盛山城で左近は新しく完成した改良型種子島を見つつ深い溜め息を吐いた。
「まぁ……うん(色々やりまくったからなぁ……)」
左近からの報告に将和は苦笑いしつつそう言いながら左近から改良型種子島を受け取る。銃口を覗くと数本の溝が刻まれていた。
「施条は何本だ?」
「将和はんが手に持ってるのは特別の五本や。量産型は三本にしとるで」
「射程距離は?」
「量産型のはドングリ型の弾丸を使用して約165間や。将和はんのは300間やな」
「(まぁ、戦国の技術でそこまで伸びるのは御の字か)分かった、御苦労だったな」
「まぁ楽しい改良やったけどな」
左近はニヒっと笑うのであった。左近が出た後、将和は改めて改良に掛かった費用を精算する。
「……量産型だと種子島8丁分で特別型だと……17丁分か……」
将和はその額に頭を抱える。
「出来れば特別型のを量産したいが……今の段階では細々とした生産になるか……」
将和は溜め息を吐きながら改良型種子島の報告書の作成に取り掛かるのである。なお、報告書を見た長慶も直ぐに量産型の生産を指示するのである。
そんな中、和夏を通して将和はある情報を入手する。
「何? 細川晴元が此方に接触しようとしているだと?」
「あぁ、厄介な事にね」
「理由は?」
「近江の坂本で将軍義晴の娘が元服した上将軍職を譲ってもらったそうだ」
「……まさか烏帽子親を六角定頼がしたからか?」
「その線が濃厚だね」
「……アホか……と言いたいが細川家という面子か。鬱陶しいものだな」
「それでどうする?」
「フン、細川とは関わりたくないからな。一筆書いてやろう」
「ほほぅ」
なお、晴元の元に届けられた書状には『馬鹿メ』の一言しか書かれておらず晴元は怒髪衝天の如く怒り狂ったが手元に味方が少ないので何かをするわけにはいかなかったのである。だが動いた者がいた。
「何? 義晴が慈照寺の裏山に城を築いていると?」
「はい~、少々厄介かと……」
友通が将和に頭を下げながら報告をする。
(……晴元が同調するかもしれんな……)
足利と細川が手を組んでも兵力は其ほど無さそうではあるが権威があるため少々厄介ではある。
「密かに兵を集める。場合によっては場合がある」
「分かりました~。即時に動けるよう三千の手勢を集めておきますね~」
「頼む」
友通が下がる。暫くして京で動きがあった。
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