day1 嘘つきたち
そして散々じらしてやっとその口を開いてくれる
「……私達の関係よね?例えば記憶のないあなたに対して私は恋人だったと言えば、本当にそうなるのかしら?」
【えっと……そういうことにはならないと思います】
「つまりは私が何を言ってもそれを裏付ける証拠がないのだから無駄ということよ」
【はあ、そうですね】
「だからキミは誰かに何かを吹き込まれたとしてもそれを簡単には信じてはいけないこと!良いわね?真っ白で無垢になったキミを狙う輩は少なくないんだから。例えばさっき話していた中国代表候補生の鈴ちゃんとかね」
【どういうことですか?】
鈴が僕を狙っている?どういう事だ?
『キミは鈴ちゃんと付き合ってなんかないなかったわ』
やっぱりそうだったのかあまりにぐいぐい押してくるから、鈴のことはあまり信用できなかった。それにどうして僕なんかと付き合いたがっていたのだろうか?分からない。
【……それじゃあ、会長と僕の関係はどういったものなんですか?】
「私はキミのお姉ちゃん。キミが困っているときに助けて、キミが悩んでいるときに解決して、キミの側にずっと寄り添うって約束したお姉ちゃん。それが私の役目。そして私がお姉ちゃんであることを君は受けいれてくれた。誰にも渡さない。私だけの可愛い可愛い弟、それがあなた。本当のことよ?」
僕の姉になったつもりでいる彼女は恍惚な笑みを浮かべながら話した。
会長は少し頭がおかしいのも知れない。急にお姉ちゃんだなんて……
【あの、前の僕がどうだったか知りませんが、冗談ですよね?】
それまで笑顔で話していた会長の顔が一瞬固まる。
鈴の時には先延ばしにしたが今回はハッキリと断ろう。
「照れないの。寂しいならお姉ちゃんに甘えても――」
急にお姉ちゃんがどうとか言ってきて気持ち悪い。ここはしっかり断らないと。
【昔はどうあれ今の僕はあなたの弟じゃないですから……】
『ふーん、私をあんなに散々働かせて、ちょっと虫が良すぎるじゃないかしら?』
働かせる?一体どういうことだ?過去の僕が会長に何かを頼んだりしたのか?
うろたえる僕をしり目に会長はどんどんと話していく。
「まあいいわ、今日の所はこれくらいにしましょう。貴方が否定しようとも私はあなたのお姉ちゃん何だからね?いつでも頼っても良いのよ、前みたいに……。それと、あまり人に会うのは避けた方が良いわよ。面倒くさいことになるから」
【わ、わかりました】
「それじゃあ、またね、弟くん!」
そう言って自分で入れたココアを飲み干すと部屋を出ていく。
『鈴の恋人発言を何故か会長が知っていた』
やっぱり鈴の言っていたことは嘘だと僕も思う。会長は僕を弟としてみているらしい。だけど、鈴ちゃんも会長もどこか狂気的な雰囲気を漂わせていた。
何が真実で何が嘘なのかを見極める必要があるのかもしれない。
僕も入れてくれたココアを飲み歯を磨く。さっきまであまり眠気はなったが、何故か一気に強い眠気が襲ってくる。僕はベッドに潜り込み眠るのであった。
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