大神紅葉、国土綾乃2
「ではモミジ様、此方を」
「おー、ありがとうございます」
諏訪への出立に向けて、持ち物の整理を始める。
衣食住の最低限の確保は勿論、対バーテックス用の武具も用意しなければならない。
バックパックへ荷物を詰め、あーでもないこーでもないと大社の人と話していると、そこへ一人の少女が現れた。
「あー……、スッキリしたぁ」
「よう、綾乃。久しぶりの湯船はどうだった?」
「何も言えねぇ」
「そうかい」
小柄な少女は、そのまま近くのソファーへと足を進めると、バフッと音を立てて飛び込んだ。横になり足を組んで、所謂昼下がりのおっさんの様な体勢である。
格好も巫女が滝行を行う際の行衣を崩して着ており、薄手のその服装はこの場にひなたが居ればはしたないと叱責しているだろう。
なお本人が着ている理由は、近くにあったからだ。
「あ、綾乃様?殿方の近くでその様な格好は……」
「あー大丈夫大丈夫。モミジはそんなんじゃないから」
流石にその格好は……と大社の職員がやんわりと注意するが、綾乃は聞く耳持たぬと手を振る。
あ、ダメだコイツ。と悟った女性職員は目配せすると、モミジの近くにいた別の職員がそそくさとその場を離れた。
おそらくひなたを呼びに行ったのだろう
「おいおい、ひなたにドやされるぞ。公共の場ではちょっとは考えろ。TPOだ、TPO」
「今ひなちゃん居ないしー、何してようがアタシの勝手だしー」
もうすぐそのひなちゃんが来るんだよなぁ。と正座からの説教コースまでを想像しながら、頭の中で御愁傷様と手を合わせた。
「聞いたよ。次は長野だって?」
「ん、おう。岐阜の手前までは前に“道”を作ったろ。そっからは自力だけどな」
「アタシも行くよ」
振り向けば、綾乃が目を合わせて笑う。
「前の疲れが取れてないだろ、死ぬぞ」
「それはモミジも一緒でしょ?でも行くってことは、かなりの急用って訳だし、ならアタシも行く」
それに、とテーブルに置かれた来客用のお茶菓子を手に取ると、包装紙を解いて口に放り込んだ。
「若ちゃん達からのお願いでしょ? 友達が困ってるなら助けないとね」
「綾乃……」
思わず荷造りの手を止めて、綾乃の方をじっと見る。マジマジと見つめられて照れたのか、綾乃はやだ、と手を振る。
「ち、ちょっと? そんな真面目な顔で見ないでよ。恥ずかしいってば。そんな、アタシのうし、ろに……?」
そう、じっと見る。綾乃の後ろを
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