ハーメルン
もしも、比企谷八幡に友人がいたら
第12話

中間試験が目前に迫っていた。
例に漏れず俺も勉強をしている。時計を見ると一二時近くを指していた。

「……コーヒーでも飲むか」

MAXコーヒーのあれこれを考えながらリビングに入ると、妹の小町がソファでぐーすか寝ていた。
……こいつももうすぐ中間試験のはずだが、相変わらず肝の太い妹だった。
マグカップにインスタントコーヒーをぶち込んでから、そこに沸いたお湯を注ぎ込む。そこに牛乳と砂糖をたっぷり加え、ティースプーンで四回ほど回す。すると、俺好みの甘々コーヒーの出来上がりだ。
すると、小町がくんくんと匂いを嗅ぎつけたのか、がばっと跳ね起きた。都合十秒ほど静止した後すうっと大きく息を吸うと、馬鹿でかい叫び声をあげた。

「しまったぁ!寝すぎたぁっ!一時間寝るつもりが……、五時間寝てたぁっ!」

「あーあるある。って寝すぎだろ。帰ってきて即寝たのかよ」

「失礼なっ!ちゃんとシャワー浴びてから寝たよっ!」

「やべぇ、なんで今俺怒られたのか全然わかんねぇ」

「そんなことよりなんで起こしてくれなかったの⁉︎」

小町は何故か俺にぶーぶー文句を垂れる。

「どうでもいいけどズボン履け。それと勝手に俺の服着んな」

「ん?ああこれ。寝巻きにちょうどいいんだよ。ちょっとワンピースっぽくない?」

伸ばすな伸ばすな。ブラが見えてるから。くるっと一回転すんなパンツ見えんだろ。

「……まぁもう着てねぇからやるよ」

「おお、サンクス。じゃあ小町も何か下着あげるよ」

「ああ、そいつはありがとよ」

本当にくれたら雑巾にでもしようと思いながら俺はコーヒーを啜る。
小町はキッチンへ向かい牛乳をレンジで温め始めた。

「っていうか、お兄ちゃん、こんな時間に何してんの?」

「試験勉強だよ。今は休憩に下りてきたんだ」

俺が答えると、小町はへぇと驚く。

「小町も勉強しようかなぁ……」

「そうしろそうしろ。じゃ、俺勉強に戻るわ。お前も頑張れよ」

俺はコーヒーを一息に飲み干すと席を立つ。と、その時、ぐいっとTシャツの後ろを引っ張られ、ぐえあとウシガエルろような声を出してしまった。

「小町も、って言ったよ?そしたら普通『一緒にやる 』って意味だよ?お兄ちゃん、日本語不自由なの?」

「不自由なのはお前だ……」

まぁ、一応一段落しているし、アホな妹の勉強を見てやるのもいいだろう。そんなわけで「夜のお勉強」である。




部屋から自分の勉強道具一式を持ってきてリビングのテーブルに広げた。間違えたものを問題と答えとかいせつをまるまるノートに写す。それを何度も繰り返す。試験範囲を一周し終えたころ、小町がこちらを見ていることに気づいた。

「……なんだよ」

「んー?いやー、お兄ちゃん真面目だなーと思って」

「どんだけ上から目線だ。喧嘩売ってんのかこのガキ、そのアホ毛引っこ抜くぞ」

と、ちょっと凄んでみても小町はむしろ笑う。

「そう言ってもお兄ちゃん、小町のこと絶対に叩いたりとかしないよね」

「あ?そりゃお前あれだ。お前を叩いたりしたら俺が親父に殴られるからな。それだけだっつーの。勘違いすんな」

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