今さらではあるがらこの奉仕部という部活は要するに生徒のお願いを聞きその手助けをする部活である。と、こうして確認しておかないと、この部活がなにをしているのか本当にわからなくなる。
だって、俺も雪ノ下も普段ただ読書してるだけなんだぜ?拓也や由比ヶ浜なんてさっきから携帯いじってるだかけだし。
「ん。あー、っつーかお前らなんでいんの?」
あまりにも自然にここにいるせいで、当たり前のように対応してしまったが、由比ヶ浜も拓也も別に奉仕部の部員ではない。なんなら俺自身怪しいものだ。
「え?あーほら、あたし今日暇じゃん?」
「じゃん?とか言われても知らねーよ。広島弁かよ」
「はぁ?広島?私千葉生まれなんだけど」
実際広島の方言は「〜じゃん?」とつくので、「え、いえ初めて聞きました」みたいな反応をしてしまうことがよくある。男の広島弁は怖いイメージがあるが、女性の本場の広島弁はそれはもう大層可愛らしく、俺の選んだ可愛い方言十傑にランクインするくらいなのだ。
「俺はほぼ毎日来てんだから今更だろ。気にすんな。あと俺は広島弁もいいが博多弁の方が好きだな」
そういえばこいつほとんど部室にいたわ。俺より部員やってんじゃね?もちろん、博多弁もランクインしているのは言うまでもない。
「それに、博多で食ったラーメンも美味かったしなぁ」
しみじみと思い出に浸っている拓也をよそに由比ヶ浜は喋り出す。
「ラーメンっていえばさー、ゆきのん、なんか松戸あたりにラーメン屋さんがたくさんあるんだって。今度行こーよ」
「ラーメン……。あまり食べたことがないからちょっとよくわからないのだけれど」
「だいじょぶ!あたしもあんま食べたことないから!」
「それのどこが大丈夫なんだよ。由比ヶ浜」
「うん。それでさ、松戸のなんだっけな〜。ナントカってとこがおいしいらしくて」
「この子、話聞いてるのかしら?」
「知らね」
ラーメン屋について噛み合わない話をしている三人をよそに、俺は読書へと戻る。四人いるのに独りぼっちって一体どういうことなの……。
けど、まぁこうやって過ごしている時間はなんとなく高校生っぽい気がしなくもない。中学生に比べて活動範囲が広がる高校生はとかくおしゃれだのグルメだのに興味を示すものだ。ラーメン屋の話なんていかにも高校生っぽいじゃないの。
「おい、八幡。お前も一緒に行こうぜラーメン屋」
声のする方を見ると、さも当然のように俺を誘うあいつがいた。
「……そうだな」
……予定空けとくか。
翌日のことである。拓也と部室へ向かうと雪ノ下と由比ヶ浜が扉の前で立ちつくしていた。何してんのこいつらと思ってみていると、どうやら扉をちょっとだけ開けて中を覗いているらしい。
「何してんの?」
「ひゃうっ!」
可愛らしい悲鳴と同時に、びくびくびくぅっ!と二人の身体が跳ねる。
「比企谷くんに、佐藤くん……。び、びっくりした……」
「驚いたのは俺たちのほうだよ……」
どんなリアクションだよ。夜中まで、リビングで出くわしたときのうちの猫かよ。
「いきなり声をかけないでもらえるかしら?」
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