閑話 ~野間 大悟《その1》
俺は岸中から鈴蘭へと来る予定の後輩二人、龍光寺由紀也と迫田武文。この二人の入学を待っている、同中出身の後輩である二年の伊東優哉と川尻林太郎共々な。何故待っているのかだって? 理由なんざ一つしかねー。俺達の派閥を作る、…コレよ!
自分で作りゃーいいと思うかもしれねーが、残念ながら俺はそんな器ではない。勿論、優哉と林太郎の二人も無理だ。俺達三人は喧嘩に関しては強いと胸を張れる、しかし派閥の頭となると…ダメだ。
現に岸中時代、頭として君臨していたが強いだけの無能だった。強けりゃいい、力で下を抑えてりゃー何とかなる。そう思っていた時に由紀也と武文が入学してきて負けたわけよ、…武文は降したが由紀也は別格で大敗。負けた瞬間、皆離れちまったわけだ。初めて負けて分かった、俺は頭となる器じゃねーって。
それに比べて由紀也はスゲーぜ? 一年で頭、上手いこと皆をまとめやがった。俺を含めた喧嘩バカ達をまず力で屈服させ、後は共にバカやって笑ってよ。強いだけじゃなくて俺達を惹き付けるナニカ、それがある由紀也に俺達は素直に従った。この男こそが俺達の頭、大将だってよ!
そういうわけで二人の入学を待っていたんだが、…まさかの武文が別派閥に行きやがった。いつも二人一緒の由紀也と武文がねぇ、…これには岸中軍団の俺達も驚いたぜ。まぁ別れて分かることもあらぁ~な、敵味方と別れても友情は変わらず。青春していやがるのな!
由紀也を派閥の頭にし、俺達がそれに従うってーのが岸中盤石の布陣。その無敵の布陣がこの鈴蘭に再現された今、鈴蘭最強の派閥は俺達のモノだぜ! …つっても、支配とかには興味がないんだよな。俺が入学する前に阪東秀人とかいう武装くずれが支配一歩手前まで手中に収めたと聞いた、しかし最終的にはズタボロにされて終わったと。
それを考えれば…そこらは月島とかいう小僧に任せればいい、武文もそこにいるしな。俺達は俺達の派閥だけを考えて動けばいい、全てを由紀也に任せれば大丈夫。卒業までの間は退屈しない、これは確実に言えることだぜ!
適度に喧嘩をし、そして仲間と遊ぶ日々。まさに充実した鈴蘭生活、流石は由紀也だぜ。俺達のことを良く見ていやがる、適度なガス抜きを見事にやってのける由紀也に代わる男なんざいねー。あの秀吉とマサが気に掛けているのも由紀也ぐらいしかいねーし、大たいした男だよな…本当によ。
そんな感じで物思いにふけながら、目的地であるダーツバーへ行く途中に鉢合わせた。
「…んだコラおっさん! 通行の邪魔だからよ、…退いてくんねーか? …おい、聞いてんのか!!」
坊主頭の三人組が目の前で騒いでいる、…見たところこの三人組は鳳仙の奴等で間違いない。この俺に調子こいできたからにはぶっ飛ばすが以前の俺だが、そんなことをしちまったら鳳仙の奴等と揉めることは確実。バカな俺でも分かること、それに由紀也にも迷惑を掛ける。
…となると、
「……悪ぃな。…ほら、…行けよ。」
俺が折れるしかねぇ、不本意ではあるが目の前の三人組に道を譲ってやる。…譲るんじゃねー、譲ってやる…だからな? ちょっとの違いだがそこが重要だぜ? …何処かの誰かに言い訳を言って落ち着こうとする俺に、
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