二度あることは三度ある
「海賊が撃ってきた!どうするのサクラ!」
慌てるシトナイかわいい。けど既に氷の矢を放つ準備をしているあたりは流石だ。
「取り敢えず私達の船には金目のモノはないと伝えてみますか。それで駄目なら、倒しちゃおう。そして傘下に加えてみよ?」
そう言って闇で砲弾を飲み込む。空気と一緒に。
「『解放』」
吸い込んだ空気と共に砲弾を放つ。先程より遙かに速い砲弾は海賊船のマストに向かい、二つに切り裂かれた。
切り裂いたのは男物の黒いコートを羽織り、その下は白のハイレグ、頭には黒いウサ耳。
「なんですか、あの珍妙な格好は。恥ずかしくないんですかね?」
「さっきまであれより大概だったし今に至っては実質全裸のサクラには言われたくないと思うけど」
「ま、まさかシトナイ、私が脱いだり見せたりするのが大好きと思ってません?」
違うの?と首を傾げるシトナイ。心外だ、見せたいなら隠さない。
「これは攻撃への対策ですし。いえ、攻撃そのものに対する対策、かな。私の体は、人一倍痛みに敏感なので」
「対策?って、また撃ってきた!」
シトナイが不思議がっているとまた爆音が聞こえてきて、砲弾が飛んでくる。狙いは俺。狙撃手、いい腕してるな。欲しい。というかさっきの女の子を見るに、そういうことなんだろうなぁ。
今度は防御しない。シトナイが慌てて撃ち落とそうとするが手で制する。砲弾は、俺の纏う闇に飲まれた。
「………へ?」
「ヤミヤミの実は他の自然系と違い、体を食べた実によって得る能力その物にしてかわす、なんて事は出来ないけれど、応用は意外と利くんですよ?」
ようするに全てを飲み込む闇を纏って全ての攻撃を飲み込む状態な訳だ。まあ原作黒ひげが街全体に広げても直ぐに飲み込まなかったように、普段は本当に纏っているだけ。飲み込むには意識しなくてはいけない。そういえばこれ、覇気にはどんな反応をするんだろ?覇気はあくまで流動する体の実体を捉える力であって、悪魔の実の無効化能力はない。
これは悪魔の実の力を発動している状態で実体を解いている訳ではない。流石に覇気使って炎を散らせても消し去る、なんてどこかの不幸少年の右手みたいな事は出来ないだろうし───
「サクラサクラ!さっきから撃たれまくってるよ!?」
「あ」
考え事しすぎていた。放たれた砲弾は全てシトナイが矢で撃ち落としてくれていたらしい。俺の顔に向かって飛んできた砲弾は黒帯を動かし飲み込む。
「しかしここまで撃って効かないのに引く様子がありませんね。余程の自信家か、ただのバカか、あるいは……」
「あるいは?」
「死も恐れない狂人か───」
狂人、なんだろうな。彼女達は前の世界では有名な女海賊。私掠船の襲撃を受けていた。船長を始めとする男連中が最後まで戦わずに怯えて隠れている中、最後まで戦い続けた女傑だ。本人ではないのだろうが、シトナイのようにそっくりさんなんだろうが、本質は同じはず。
というわけで、会おう。袖を伸ばして向こうの船の一部に引っかけ、パチンコのように飛んでいく。ヤミヤミのロケット!なんちゃって──
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