《第十五話、Destiny Movement》
「ッ——行動開始!」
円蔵山の戦いは、こうして幕を開けた。
俺たちは、山の中腹に存在する大空洞の中にいる。日の光の届かぬ洞窟の奥の奥、張り付けにされているのは、捕らえられた桜と、イリヤスフィールと呼ばれる女の子。
二人がいるのは巨大な一枚岩の上。ここから500mほど進んだ上で、壁のような岩を登らないといけない。
立ちはだかるのは巫女装束の美綴ひとり、とは言え油断はできない。一枚岩の上に、おそらく誰かいる。
「散開ッ!」
遠坂と掛け声で、一斉に走り出す。
遠坂・俺・慎二・セイバー・アーチャー・メドゥーサ、計六人が、各々違うルートをとって、美綴を横目に駆け抜ける。
美綴が目をつけたのは俺だった。彼女の横をすり抜ける時、正面から刈り取るように放たれた薙刀のなぎ払いに対して、後ろに飛び、かわす。なぎ払いのモーションから次の構えに移行する瞬間、隙を見つけた。
だから俺は、そこに斬り込もうと一歩目を踏み出した。
「——————投影、開始」
体の左側に打刀を投影、黒い柄を右手で持って横一閃、居合のように斬り付けようとして———やめた。
急いでもう一歩後ろに下がる。下から縦一文字の斬り上げを、間合いの外に出てやり過ごした。
その時、
「おい、どうなってんだよ! 綾子!」
慎二が狙撃銃を構えながら叫んでいる。その立ち位置がそもそもおかしい。
慎二だって、俺たちと同じタイミングで走り出していた。美綴の横を通り過ぎるあたりまでは確認していた。なのに、まだ、俺の隣にいる。
他の面々も同じだった。
全員が一斉に、同じタイミングで走り出し、美綴に妨害された奴が時間稼ぎを買って出る。そしてその役は、俺が当たった筈だった。
だったら、これだけの時間が過ぎた今、全員が未だ、さっきと同じ場所にいるなんて、そんなのはまずあり得ない。
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