《第十九話、それぞれの切り札》
「私を、殺してくださって、ありがとう」
そう言って三つ指をついたメーティスは、その理由を教えてくれた。
「貴女のお陰で……いいえ、貴女と花の魔術師のお陰で、私は、あの時、貴女と共に死ねたのです」
三つ指をついたまま、もう一度頭を下げる。
「御免なさい、アルトリア。私の滅却封印を、Fate/stay nightの呪いを、ブリテンにもたらしてしまったから」
顔を上げたメーティスは、正座のまま、右手をセイバーに伸ばした。
「アルトリア、私の手を取って」
頭の中が疑問でいっぱいらしいセイバーが、メーティスの右手を下から取ると、光が、流れてきた。
メーティスの胸のあたりから溢れ出した光は、周囲に粒子を漂わせながら彼女の右腕に移動した。まるで熱が伝わるように、メーティスの右手からセイバーの右手を伝って、セイバーの胸の中に潜っていった。胸から漏れ出していた光の粒も次第に弱くなり、その全てが胸の中に収まった頃、セイバーは右手を繋いだまま、左手で胸を、柔らかく押さえた。
「これは———」
「不思議に思ったことはありませんか?
選定の剣はどうして自分を選んだのだろう、
どうして自分は男装して王をやっていたのだろう、
どうして、あれだけの精鋭を集めた円卓の騎士たちがギリギリの戦いを強いられる程に、攻めてくる敵は強く、数は多かったのだろう……と」
「ッ———それは……」
「あの時、ブリテンの王になるのは、女でなければならなかったのです」
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