閑話
一色いろはの想い
奉仕部に遊びに来たら、凄い場面に遭遇してしまった。思わず聞き耳を立ててしまったけど…。
やっぱり、あの三人の間に入るの無理なのかなぁ…。少しギクシャクしてるように見えた時もあったけど、あの絆は羨ましい。私もあの中に入れたらなぁ…。敵わないなぁ…。
でも、恋愛は別!先輩を諦めた訳じゃない!お二人には負けません!
先輩が煎れたコーヒー、飲んでみたいなぁ。今度、おねだりしてみようかな♪
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川崎沙希の心配
小町には心配ないって連絡したけど、どんな店なんだろう。
勇気を出して、入ってみよう。
「いらっしゃい。若いお嬢さんとは、珍しいな」
「…どうも」
渋いおじさん?おじさま?とにかく、渋くて格好いいマスターだ。
「何にしますか?」
「えっと…」
「特に決まってないなら、ブレンドが無難だ。それに、自信もある」
何そのニヤリとした顔。年上好きの娘がみたら、即落ちしそう。
「じゃ、じゃあ、それで」
素人の私にもわかる…。ものすごく丁寧に…、繊細に…。不味いはずがない。
「お待たせ」
「あ、ありがとう…ございます…」
「初めて来た時のアイツみたいだな」
「たぶん、私のクラスメイトです」
「そうか。アイツと仲良くしてやってくれ」
「え?」
「アイツは、たぶん辛い思いをしてきたんだろうな。そうじゃなきゃ、あの歳であんな目にはならない」
「…はい。優しいのに周りに気づいてもらえなくて、人助けをする為に自分が傷ついて、自分に向けられる行為の裏を考えて動けなくなって…。たぶん、たくさん裏切られたりしたんだと思います」
「嬢ちゃんは、アイツのことよく見てるんだな」
「あっ、いや…、その…私もアイツに助けられました。なにか恩返しがしたいんですが『気にするな』の一点張りで…」
「そういうところが憎めないんだよ」
「はい」
「あんな目になっちまうほど、辛い思いをしても、どこかで人を信用している」
「そうじゃなきゃ、人助けなんて出来ませんから」
「そうだな」
「アイツは今も苦しんでいるのかな…」
「大丈夫だろ」
「どうしてですか?」
「この前、コーヒーの煎れ方を悩んでいたが、ちょっと教えたら、なにか憑き物が落ちたみたいな顔してたからな。何か掴んだんだろうな。いい目をして帰っていったぞ」
「そう…ですか」
「だが、またつまずいたりするだろう。その時は、嬢ちゃんの出番があるかもしれない。その時は助けてやってくれ」
「はい、必ず!」
「嬢ちゃんも、いい顔になったな」
「あ、いや、その…」
「はははっ!」
「ご馳走さまでした」
「気が向いたら、また来てくれ」
この店、入って良かった。比企谷のことも少しわかったし…。
今度はアイツと二人で来たいな…。
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