#9 オジイチャン×ハ×カイチョウ
なんと二次試験合格者はラミナ1人という結果となり、会場は異様な空気に包まれる。
そんな中で審査委員会に報告の連絡を入れているメンチの声が響き渡っている。
「だからぁ仕方ないでしょ、そうなっちゃったんだから! ……いやよ! 結果は結果! やり直さないわ!」
どうやら審査委員会からも問題ありと判断されたようだが、メンチは全く意思を変えようとしない。
(審査委員会に雇われた身なんやから頷こうや。正直、ヒソカやら針男やらの殺気がどんどん強なってきて、めっちゃここから離れたいんやけど……。他の連中も殺気立ってきとるし)
ラミナは徐々に笑みを深めていくヒソカの気配に眉を顰める。針男からも禍々しいオーラを感じて、誰かが動けばそれに乗じる気配がビンビンである。
「報告してた審査規定と違うって? なんで!? 始めから私が美味しいって言ったら合格にするって話になってたでしょ?」
「メンチ。それは建前で、審査はあくまでヒントを逃さない注意力と――」
「あんたは黙ってな!!」
流石にブハラが注意しようとしたが、メンチは怒鳴って黙らせる。
サラッと凄いことを言ったことにラミナは更に眉間に皺が寄る。
(審査委員会と試験官の審査基準に差異があったんかい。思いっきり私情で動いとるやないか、この姉ちゃん……)
「こっちにも事情があんのよ! 受験生の中にたまたま料理法知ってる奴がいてさ~! そのバカハゲが他の連中に作り方バラしちゃったのよ!」
「ぐ……」
「とにかく、あたしの結論は変わらないわ! ちゃんと合格者も出てる以上、この二次試験は合格者は1人よ!!」
メンチはまくし立てるように言い切ると、通話を切って電源も切る。
携帯を投げ捨てると、足を組んで両手をソファの後ろに回して「ふん!」と不機嫌そうにする。
ブハラとラミナはそれにため息を吐く。
レオリオ達不合格者とされた者達は徐々にざわめきが大きくなり、殺気立ち始める。
「マジかよ……」
「まさかこれで本当に試験終了かよ?」
「冗談じゃねぇぞ……!」
(やろうなぁ。うちかて調理法知っとったから出来ただけやしなぁ)
ラミナも受験生の気持ちがよく分かる。
流石に理不尽が過ぎる気がするので、不満が噴出するのは当然だと思っている。自分が合格してしまったせいと言うのもあり、尚更居心地が悪い。
ドオオォン!!
その時、何かが砕ける音が響き、目を向けると恰幅の良いレスラーの男が苛立ちを露わにして拳を握り締めていた。その目の前には大きくひしゃげたシンクが見受けられ、先ほどの音は彼が拳を叩きつけた音だったようだ。
「納得いかねぇな。とても『はい、そうですか』と帰る気にはなれねぇな」
男は青筋を浮かべてメンチを睨みつける。
「俺が目指しているのはコックでもグルメでもねぇ! ハンターだ! しかも賞金首ハンター志望だぜ! 美食ハンター如きに合否を決められたくねぇな!!」
「それは残念だったわね」
「……何ぃ!?」
「今年は試験官運がなかっただけよ。また来年頑張れば~?」
メンチは涼しい顔で男に言い放つ。
それに男は我慢の限界を迎え、拳を更に握り締めて殴りかかろうとする。
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