リンカーという男
夜は明けて、サーヴァント・バーサーカー『薪の王』が召喚されてから2日目の朝となった。ベットからのそりと起き上がった、いや、起き上がれた雁夜は、昨夜の出来事を思い出す。
蟲蔵での英霊召喚に、名も知らぬ無名の英霊。かと思えばかつて世界を救い、終わらせたなどという偉大も偉大、まさに英雄にふさわしい行いをしているにもかかわらず誰の記憶にも残らない。正直に言えば、雁夜はこの話が嘘ではないかと疑いもした。だが、あれを見せられた。
桜に突き刺さる螺旋を描いた剣、だがそれは桜を傷つけることなくそれどころか身体を癒し、蟲まで焼き切ってくれた。ただの癒しの力をもつ英霊は多い。だが、あれは何故かそう思うことができなかった。ただの癒しではないナニカ。まるで神の力の一端のように思え、そんな自分を馬鹿だと切り捨てた。だが、あの英霊、リンカーと呼ぶようになったあいつはどこか底知れない。
起きて早々そんなことを考え目も覚めたところでベッドから降り、軽く着替えてリビングのある一階へと向かう。リビングのドアを開けると、庭に立つ人影ひとつ。それが誰かすぐにわかった雁夜は窓を開け、おはようと声をかける。
「ああ、おはよう雁夜。どうかしたか?」
こいつこそがリンカー。昨晩召喚した英霊。数年ぶりに友人になりたいと思えた人。
「いや、とくに何があるでもないんだが…。ああ、そういえばこんなとこでボーっと突っ立って何してたんだ?」
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