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事件記録193267-1
SCP-████ » 事件記録193267-1
日付: 20██年██月██日██時
場所: 日本国██県███町██-██████
概要:「子供がトラックに轢かれた」という複数の通報によって現地警察が到着した事故現場には、損傷した中型トラック1台と大量の血痕が残されていました。
事情聴取と目撃者の証言から轢かれたのは男子学生(以下SCP-████)であることが判明しましたが、SCP-████は事件後に現場から無傷で立ち去ったという証言も含まれており、その場における警察の調査では血痕以外の遺体と思われるものを発見することが出来ませんでした。
また周辺地域において該当する人物の発見及び医療機関への接触が見られず、SCP-████が失踪するという事態に陥りました。
この異常性から現地警察に潜入していたエージェントにより、財団に報告が為されました。
███分後、日本国内一般緊急出動プロトコル、カバーストーリー『警察による現場検証』の適用による現場封鎖の後、協定によって警視庁公安部特事課、及び、財団調査チームが派遣され、更に詳細な検証が行われました。
トラックの損傷の度合いは明らかに高速で人間に衝突したことを示唆しており、これは通常の人間が確実に絶命するだけの衝撃力を与えたことが判明しました。
残された血痕の量は成人男性の致死量の約二倍であり、SCP-████は調査初期の段階においては不死性、もしくは何らかの人型実体であることが考慮されていました。
付随して血液検査が行われましたが、異常性のない血液であったためにサンプルが回収されるだけに留まりました。
(血液成分の詳細は事件記録193267添付資料ろ-4を参照してください)
ハーパー霊素監視装置による調査結果はネガティヴであり、死亡者はトラックの運転手のみが確認されました。検屍の結果、運転手は自然的理由によって事件発生以前に死亡していた事が証明されています。
・
すでに現地警察によって周辺の捜索は終了していた。
結果は空振りだった、遺体と思しきものはついぞ回収されずじまいだった。
死体が消失したという考え方もできるが、目撃者たちの記憶検査の結果は1つの答えを導き出している。
轢かれたとされる男子学生は、中型トラックの直撃を受け、致死量の血液を残しながらも現場から逃走を図り、その目論見は達成されてしまったことを。
ならば市内全域へと捜索を拡大しなければならない事は明白であった。
彼らの出番だった。失せ物探しは職業上避けられない行為となりつつある。
そしてその失せ物は大抵の場合において、通常の警察の手に余るものばかりだった。
「人の皮を被った化け物が、野放しにされたと考えろ」
捜索を任されたエージェントリーダーは、直属の部下に重々しく言い放った。
その様な存在が、人間に擬態し社会に何食わぬ顔で混ざり込んでいる可能性が提示された事に対する恐怖がそこに込められていた。
最悪の想定の一つだった。
財団が最も恐れる事態を引き起こす要因になりかねなかったからだ。
恐らくあの事件は対象にとってもアクシデントだったのだろう、だからこそ今回露見した事は突破口になり得るかも知れないとも彼は思った。
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