ハーメルン
転生者vsSCP
+1.5 望むべきではなかった

「せんせぇさぁ、今日は遅れるんだってー」
「えーせんせーが遅刻すんのー?」
「違うって昨日の事故で職員室ゴタゴタしてんの、集会あるかもって!」

そんなお喋りを廊下でしていた女子たちが、互いにめんどくさーと笑い合うのが聞こえる。
どことなくみんながソワソワしている感じがした。外敵の侵入で騒がしい蜂の巣みたいに。
何時もはそういったざわめきを姦しく思っていたけれども、自分の日常の一端が戻ってきたように思えて密かに、僅かに俺は安堵していた。
どうやらここも変わってないようだ、という安心感があった。
その気持をおくびにも出さないようにしながら、教室に入り、おはっすといつもと変わらない挨拶をして、友人たちとの会話の輪に加わる事ができた。
そこそこ仲のいい連中だったのでなんの気兼ねなく色々聞けたおかげか、昨日の状況が断片的にだが俺にもわかってきた。
もちろん、こちらも事故の話題で、現場から消えた生徒について盛り上がっている。
どうやら教室全体は朝からそれ一色なようだ。無理もないかもしれない。
みんな噂は大好きだし、俺も大好きだ、もちろん他人のに限られるけれども。
それが被害者行方不明、残された大量の血痕と若干怪しい方向に逸れていれば、美味しいスパイスになることは確かだ。
そりゃあ、ソソられる事だろう。自分のことじゃなけりゃ、さぞ楽しんでたに違いない。
消えた生徒はどうやらこの学校の生徒らしいと早いことにもう広まっていたようだ。
恐るべきかな高校生の噂ネットワーク。
もしこの世界に財団が居たらつくづく大変だろうなと思う。
ソレ専門の機動部隊やwebクローラーなどで片っ端から削除依頼とかしてるのだろうか。
別に収容も何もした覚えはないが、明らかに封じ込め失敗とでも言うべき事態だった。
教室の窓の外に広がる、青い、青い空を見て、どことなくアンニュイな気持ちになった。
それでも、こんなときだからこそ平然とすべきだと自分に言い聞かせた。

「やっぱ消えたのって、うちの生徒だったのか?」

何も知らないという態度と口調を演じながら、びっくりするほど白々しい言葉が口から出てきていた。
だが、それに隣席の佐藤圭が答えてくれる。
そうだ、確かにウチの生徒だったらしい、と。些か冷静に。
オカルトとかの話は特に興味をソソられないらしいが、話自体は聞いてはいたのだろう。
すでに生徒たちの間で面白半分に犯人探しならぬ被害者探しってのが始まってるとも教えてくれた。
何じゃそりゃあと笑いながら、俺は少しだけ冷や汗をかいたが杞憂に終わった。
こんな日に限って学年で欠席者が一人も居なかったそうなのだ。
これでは目星すら立たない。目立つような怪我をしているようなやつも居ない。
おまけにそんな捜索状態であるから被害者も、名乗るに名乗り出れないんじゃないかという話になったようだ。
今日の自分の判断に少しだけ感謝した。
大事を取って休もうかと思ってもいたが、こうして日常を取り戻すために登校している。
おかげで現代の学生魔女狩りの災禍から逃れることが出来たみたいだった。
ただ学校に来る途中でいきなり全身が崩壊したり、肉塊カルト由来の“にくにくしいもの”に突然なるのではないかと内心怯えたものだ。
外に出ない所を包丁でちょっと切ってみたりもしたが、無事に赤い血は流れ出てきていた。

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