10 異文化交流は素敵な文化だって聞いたよ?
「――さて、貴方方が聞きたいのはまず二つでしょうから先に答えさせて頂きます。ひとつ、私は本当にプレイヤーなのか? 答えは然り、ですわ。このスレイン法国とやらが崇拝する六大神、彼らと同じ世界から私は来ました」
おお、と小さな歓声が上がった。
声の主は漆黒聖典のひとり、最近すごくどこかで見たような金髪の男であったがシラタマはその男を無視して話を続ける。
「ではふたつ、陽光聖典が不運にも遭遇した強大なモンスターとはなんなのか? こちらに関しては私も今はわからない。とだけお答えしましょう」
その言葉に神官長らがどうしてとでも言いたげに口を開くが「――それに」シラタマは静かに手のひらを翳しそれを止める。
「……ここまで来る際に彼ら、ルーイン殿からいくつかお話を伺いましたが――魔神、と呼ばれる存在がこの世界にはいるのだとか?」
その言葉に、全員がはっとした。
魔神――。
それはかつて六大神の従属神であった者らが堕落し悪魔へと化した存在であり、多くの民や国を滅ぼしたという。一部では十三英雄によりすべて倒されたとも言われていたが
「……いや」
ここで初めて最高神官長が口を開いた。
もしやそれは、破滅の竜王なのではないか――と。
「……破滅の竜王?」
なんじゃいそれはとシラタマは隣にいるニグンに視線を送るが、ニグンは困ったように小さく首を振り返す。
「それに関しましては私共の方から説明致します」
漆黒聖典の隊長らしき細身の青年が前に出る。自然とシラタマの視線は彼に向き――全然タイプじゃねえなと肩を竦めた。
漆黒聖典第一席次にしてプレイヤーの血を引く神人であると軽い紹介だけされた隊長は、数日前に同じく漆黒聖典第七席次〈占星千里〉によって予見されていた世界を滅ぼす力こそが破滅の竜王だと説明してくれた。
なんでも彼らは明日にでもその破滅の竜王を捜し支配下に置く為に法国から出撃する予定だったらしい。たかが予見くらいでとも思ったが隊長は違うのだと苦渋の表情を浮かべ、最高神官長が口を開く。
「……土の巫女姫が、神殿ごと爆発に巻き込まれて亡くなったのだ」
「な――っ!?」
ニグンだけが驚愕の声を上げ、慌てて口を噤んだ。場にいた他の者達は悲痛の表情を浮かべている。彼らのその様子からシラタマは「よくわかんないけどその土のなんたらが爆死してやばいよやばいよってことなのかな?」程度に考える。が、続く最高神官長の言葉がその思考に待ったをかけた。
「それも丁度ニグン・グリッド・ルーイン、お前達陽光聖典を監視した瞬間に、だ」
「――――ッ!」
(…………ん?)
「おそらくだがその時、お前達はその強大なモンスターと対峙していたのではないか?」
「……はっ! そ、その通りで……」
(………んんん?)
ちょっと待てよとシラタマの背中に嫌な汗が伝う。神官長らが土の巫女姫爆発からの大惨事からの法国大パニックからのそのどさくさに紛れて逃亡した漆黒聖典の裏切り者クレマンティーヌの話をしていたが、シラタマはそれよりもとこそ~っと《伝言》をモモンガへと繋げた。
『モモンガさんモモンガさん応答してください。こちらシラタマ』
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