05
まさに圧倒的にして無双。
おそらく最後の一体を屠ったであろう戦士はその手に握る煤を振り払い、その場に佇む。
人々はまだノイズがいるのではないかと警戒を強めていたが、戦士が動くことがないことから漸く警戒を解き始めていく。
誰かが声を発する。
夕焼けを背にし、自分たちを見つめる黄金の戦士を。
その時、戦士がゆっくりと歩きだす。人間の犠牲とノイズの消滅により作り出された煤を踏みしめ、呆然とした様子の少女のもとへ。
そして、戦士は少女の目線に合わせるよう膝をつく。
──怪我はないか?
少女はわずかに首を縦に振る。
──…… そうか
戦士はやさしく言い、少女の頭へ手を乗せた。
少女はたどたどしく口を開く。
あなたはだれ? と
その問いに戦士は少しの間を置き、答える。
── "コーカサス" それが俺の名だ
戦士、コーカサスは用は済んだとばかりに立ち上がりベルトらしきもののサイドバックルをたたく。
【Clock Up!】
僅かな風が煤を舞い上げる。
その場には少女しかおらず、コーカサスという戦士の姿はなかった。
残された人々は突然姿を消した戦士に呆然とするが、沈黙を破るように歓声を上げた。
「「「「コーカサス! 我らが救世主!! 偉大なるヒーロー!!!」」」」
半ば狂気的な歓声のなかに先ほどの少女もおり、ひたすらに同じ内容を叫ぶ。
この日を境にコーカサスは世界中で目撃され、ノイズを倒す以外にも人身売買、人体実験、違法な薬物の密売を行うような組織を数多く壊滅させていった。
そのたびにネットにはコーカサスの動画が流れ、彼を称えるものが増えていき、彼が現れたと聞けばそこに赴きどれだけ彼が素晴らしいかを昔の宣教師のように人々へ教え三大宗教すら上回る新たな宗教 "コーカサス教" というものが作られた。(内容はボランティアだったり、医療活動などといった意外と慈善活動を主としている)
そして、今日も日本に現れたノイズをコーカサスは倒していく。
○
そういえば今日はスーパーの特売だった……
葡萄のようなノイズの脳天へ踵を叩き込み、ふとピキーンと新しいタイプ的な効果音とともに思い出す。
──総司よ、タイムセームならあと5分ほどで始まるぞ
そうか……
何体目かわならないノイズ、そのうちの飛行型の攻撃をバク転でかわしアッパーで空中へと吹き飛ばし、ホルスターから抜いた "ゼクトクナイガン" で撃ち抜き炭素の塊へ変える。
現在の時刻は午後の2時55分。3時から近所の大型スーパーで特売が始まるというのに間に合わなくなってしまう。
それなのに大空を埋め尽くすように空を飛ぶ雑音たちのせいで無駄に時間を食ってしまう。
肝心のコーカサスエクステンダーは現在メンテナンス中のため、飛んでたたきおとすことも出来ない。さて、どうしたものかと思っていると。
──なら総司くん、私の出番ですね
──ケタロス…… お前が自分から出てくるとは珍しいな
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