06
──思い出されるのは最悪の記憶
『ノイズ!? なぜよりによってこの場所に!?』
『ヒッ!? だ、誰かたすけ───』
『全員逃げろォォオ!!』
その日はとある遺跡の発掘作業を行っており、私は両親に連れ添う形でそこにいた。
何事もなく終わるはずだったそれは目的のものを発掘した瞬間に脆くも崩れさる。
周辺に現れたのは特異災害ノイズ。
国連総会にて認定された特異災害であり、人類の天敵。
奴等に触れられた瞬間に体は炭化し、人間だけを襲う化け物。その襲撃を受けた私たちは、次々とその餌食にかかっていく。
『2人ともこっちだ!』
『お父さん、お母さん……!』
『ッ、あなた!』
『……え?』
『お、父さん…………』
奴らは大切なものを全て奪っていく。 目の前で炭素の塊へと変換させられる肉親。
そして、パニックを起こしそうになった私を励まし命をかけて逃がしてくれたお母さん。
『ッ…… お母さん、お父さんッ』
涙をこらえ、出口をめざして走る。 そして、ようやく見えてきた出口。そこから漏れる光を見て希望を抱き、全力で出口を抜ける。
──だけど、この世界は残酷だ。
『う……そ…………』
そこには数多のノイズがおり、遺跡内部だけではなく外にまで湧いていたのだ。
私と存在に気がついたノイズたちは一斉に向かってくる。
『ア……ァ…………』
希望など一切ないその光景を見て、私はへたり込む。全力で遺跡の通路を走り抜け、既に息は絶え絶え。精神的にも身体的にも限界だった。
……あんなに頑張ったのに、結局は無駄に終わるのか。
『ッ! そんな、わけ…… ない!!』
脳裏に浮かんだ言葉を即座にかなぐり捨て、歯を食いしばる。
近くにころがっていた採掘道具を掴み、子供が持つには重すぎるそれをなんとかノイズたちにむけて構えた。
『お父さんとお母さんが命をかけて逃がしてくれたんだ…… こんなところで、私はッ!! 生きるのを諦めるわけにはいかないんだッ!』
自分を叱責する思いも込めて叫び、ノイズたちへ駆け出す。
そして────
「……んぁ?」
ふと、目を覚まし少女はぼんやりと体を起こす。
「ふわぁ…… 随分と懐かしい夢を見たな」
ベッドから体を起こし、カーテンを開ける。
窓から外の風景を覗くと、どこまでも澄んだ青空に大きな入道雲が広がっていた。
「うん、いい天気だ」
そんな感想を漏らし、奏はいつもの場所へと向かう支度を始める。
といってもガングニールのペンダントと、緑色の石を嵌められたシンプルなデザインのブレスレットをつけただけだが。
「うし。 今日もがんばりますか!」
「ちわーっす旦那」
「うむ、おはよう!」
指令室に入り、既にいた人物へと挨拶をするとその人物──風鳴弦十郎は快活な挨拶を返す。
「それにしても今日は随分と早いな。 どうしたんだ?」
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