天の道を往き、総てを司る撃槍
転生:生まれ変わること。輪廻。
私は最初から気づいていた。あ、転生してる、と。なぜそう思ったか?所謂前世の記憶とやらがあるから。
前世の名前や職業、交友関係などは思い出せないけど、これだけは覚えている。
『仮面ライダーカブト』主人公、天道総司。私は彼が大好きだった。天道語録が好きだ。彼に憧れた。絶滅危惧種の俺様系主人公。圧倒的な強さ。様々な要因が重なることでドストライクだった。
そして転生したに辺り、両親の見ている新聞を覗き見することやテレビを一緒に見ること等で情報を集めた結果、この生まれ変わった世界にはカブトどころか、仮面ライダーが存在しないことがわかった。
あの人が存在しない。その事実に絶望しかけたが、ここで私は思った。ならば私が彼のようになればいいと。
まずは料理(特に麻婆豆腐)を極めて、武術も習おうか。……その前に女児向けアニメを見せてきたり、やたらとヒラヒラした服を着せてくる両親(と祖母)をなんとかするのが先か。
「それでは次の人、お願いするわね」
私があの子を知ったのは幼稚園の時。だけど、その時はほとんど話さなかった。どんな子か知れたのは小学校の入学式の日。自己紹介の時間で、みんなその場で立って名前と好きなものとかを言っていたけど、あの子は違った。教卓まで歩いていったのだ。
「えっと……自分の席で」
席に戻らせようとする先生の言葉を無視して、右手を天に突きだす。
「私は、天の道を往き、総てを司る女。立花 響だ」
そうとだけあの子は言い放った。最初は変わった子だなって思っていた。なんか一人でいるのが普通っていう感じがしていた。実際にしばらくはあの子はずっと一人だった。それが変わったのはあの日……。
「返して!返してよ!」
「やーなこった!」
二・三年が経ったある日、私の大切な物を男子にとられた。涙も零れかけてとても困っていた時。
「やめろ」
「あ゛?なんだよ、お前」
「やめろと言っている」
クラス替えで違うクラスになったはずのあの子が現れて、男子から取り返してくれた。男子は怒ったのか拳を握って暴力に走ろうとしたけど、あの子はそれを簡単にいなした。
「あの人が言っていた……男がやってはいけない事が二つある。女の子を泣かせる事と食べ物を粗末にする事だ」
「てめぇ、何を言って……」
「あなたたち!何してるの!」
そこに騒ぎを聞き付けた先生が来て、見ていたクラスの子の報告を聞いて男子たちを連れていった。
「えっと、ありがとう……」
「気にするな。当然の事だ」
女の子なのに女の子らしくない喋り方をするあの子と仲良くなりたいっと思ったのはこの時なんだろう。自分の教室に戻ろうとするあの子を呼び止める。
「私は小日向 未来。えっと……」
「私は、天の道を往き、総てを司る女、立花 響」
入学式の日のように、そしてさっきのように右手を天に突きだしながらあの子……響はそう言った。
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